ぼく-577による記述
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――本当にあった。
それが最初の感想だった。
最初に紙片を見つけたときは、誰かの悪戯か、別の人間(それも妄想狂に違いない)が誤ってぼくの寝床に紙片を放り込んだのか、そのどちらかだと思っていた。
だが実際に日誌には記述があった。そして、書かれている通りのことが起きていた。確かにぼくにはきょうより以前の記憶がない。正確に云うと、工場に来てからきょうまでの記憶が。ぼくの身は震える。恐怖と――それ以上との怒りとに。
とはいえ、昨日の「ぼく」の期待に応えられそうな見通しはないままだった。ぼくにも良い方法なんて思い浮かばないからだ。だってそうだろう? 無数の
できることといえば、再びの丸投げ――つまり、また明日のぼくにこの問題を引き継ぐことくらいだった。
だが前回の記述を見て唯一新たにわかったことがある。ぼくの監視体制についてだ。少なくともぼくがこの
つまり、ぼくがこの部屋の
いまのぼくが残せる情報は以上。
次のぼくの健闘を祈る。
――追伸。
きょうもちょっとした小競り合いがあった。作業区分βー5で、ひとりの労働者が暴動を起こしたのだ。崩我族と班長にあっさり鎮圧されてしまったけれど。
……だが、反乱を起こしたのがまたしても「ぼく」とは、どういうことだろう。
偶然にしては出来すぎていやしないか?
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