ぼく-30774による記述
①
〈〈
五人のぼくがこの部屋にいる。数にはぼく自身も含まれているから、つまりぼくを除いてほかに四人、余計なぼくがいるということになる。
※
ぼくは十八から
今朝も労働が始まる。
すべてまったくいつも通りに。
※
廊下をくねくねと曲がり辿り着いた
明るい
工場の外へ。
外の空はきょうも白い。地面は白い
ここはどこなのか、考えることはもうとっくに辞めていた。
余計なことは考えないほうがいいのだ。
連想は毒、ましてや感情移入などはなおさら。意識は不要、自分もまた工場のひとつの部品なのだと云い聞かせる、この場所を疑問に感じる必要もその意味を考える必要もない、四年たっても人形の製造工程の全貌はまったくつかめないし完成した人形を見たこともないが、そこに疑問を抱くこともまた求められてはいない。ただぼくは警備をし、敵と戦うだけだ。いつもの習慣に従って。
地平線の手前、はるか向こうで、小さな点が蠢いている。彼らは灰色の建物――別の工場からやってきているようだった。朝礼で聞かされた話じゃ、労働者たちが団結して反乱を起こしたらしい。
互いの姿を認めながら、延々と行進を続ける時間が過ぎた。きょう中に帰れるだろうかと、あくびを噛み殺しながらぼくは思う。
異変が起きたのはそのときだった。
悲鳴。
それは前方から聞こえた。ざわめきが伝染して広がる。接敵したのか? いや違う。まだ相手はまだ少し離れたところにいるはずだ。奇襲? でもこんななにもない場所でどうやって……。そこまで考えたとき、鬨の声が地面を揺らした。同時に、重たい足音の奔流がぼくを撃つ。相手が走り出したのだ。ぼくも反射的に声をあげ、周りの労働者とと共に走り出していた。だが
不意に視界が開けた。先頭に飛び出したのだ。『敵』がすぐ近くに相対し、大声でなにかを叫んでいる。
彼らは作業着に身を包んでいる。ぼくたちと同じように。だが
――嘘だろ?
『
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