好きが一番強い ~最後の女性~
平成18年1月末、私は横浜を訪れていました。
月々のご紹介書類で知ったXさんに初めて会うためです。写真で見た彼女は大人っぽい美人。電話で話した様子も気さくで、趣味はサッカー鑑賞とのことでした。
そのときの私は知るよしもありませんでしたが、彼女はZの関係では最後に会う女性となったのでした。
そして、私にとても大事なことを教えてくれる人だったのでした。
実際に会った彼女は私よりも少し背が高く(まあ私がチビなのですが)、スラリとした体型でなかなかの巨乳(失礼)。
そのルックスはそれだけで結婚したいと思うほど魅力的な人でした。
私の好感が伝わったのでしょう。居酒屋での会話は大層盛り上がりました。彼女はサッカーファンなので、その話題をしたかったのですが、あいにく私はサッカーに詳しくありません。
しかし、とある理由で修理中ですがまだまだ使える
「このあいだね、少年サッカーがテーマのTV見たんだ……」
野蛮人、というアダ名の元サッカー選手が、少年サッカーの選抜チームを率いて、お隣の国に親善試合に行ったという番組内容。対する向こうの選手たちは、同じ小学生と思えないほど大柄で、身長差はまるで大人と子供。お隣の国は有名選手になると色々有利になるし、おまけにライバル視している日本には、彼らも親も学校関係者も絶対負けたくないはずです。たとえ親善試合であっても。
日本のTV特有のヤラセもさせにくい状況です。そもそも、まともな国なら学校や小学生相手にTV局のワイロが効くことはないでしょうし。
それなのに、日本の少年たちが連戦連勝という結果になった。
それは、いったいなぜなのか、という切り口で話したのです。
「ひとつ考えられるのは、その野蛮人って人の指導力……」
「それはないです」
「あっそう。だったら……向こうの子たちは好きでサッカーやってないと思うんだ。
少なくともTVに出たレベルの子は、人生かかってるから。
でも日本の子は好きでサッカーやってるでしょ。
好きだから強いだけなら、大人になればその有利さはなくなるけど」
「確かに今の日本のサッカーはそうですね。世界にくらべれば」
「結局、好きが一番強い、ってことかも知れないよね」
Xさんの大きな目が、いっそう大きく開かれました。
そして、うつむいて小さく呟いたのでした。
「好きが、一番強い……」
それから、Xさんはなぜか急に上の空の態度になりました。何か失礼なことを言ったのかな、と彼女に問いかけても、そうじゃなくて、と答えるばかりでした。
次の日、彼女からメールが届きました。
※ご注意 こんなふうに後の連絡があるケースは、私にとって、とてもめずらしいパターンでした。
そこには、会ってくれたお礼と、昨日はとても楽しかった、との文章の後に、こう書かれていました。
「実は私は他に好きな人がいます。その人でいいのか、好きなだけでいいのか、
と思っていましたが、尻鳥さんと話したおかげで、その人を選ぶ決心が
つきました。尻鳥さんには、きっといい人が現れると思います」
私は携帯から顔をあげると、右手の親指を立て、がんばれ、と神奈川のどこかにいるXさんにエールを送りました。
私が余計なことを言わなければ、ひょっとしたら彼女は私のものになっていたかも知れません。けれども、私の胸は清清しい思いでいっぱいでした。ひとつも後悔することはありませんでした。そして、こんな素晴らしい人と話す機会があったことを感謝しました。彼女は私に、とても大切なことを残してくれたのです。
私にとっての、
誰かを好きになるのは、自由なことです。でも、同時に、リスクを伴うことです。
好きだからといって、相手が答えてくれるとは限りません。でも、それでも、自分の気持ちに、「好き」に従う。リスクを承知で、その「好き」という自由を掴み取ろうとする。
手に入らないという不自由さの中に飛び込み、もがき、あがき、
「好き」に従い、結果がどうなろうとも「好き」である自分を捨てない。
私の望む「
それが、私にとっての
残念ながらXさんの好きな人は、他の人でした。
Xさんの言う通り、いつか私にもいい人が現れるのでしょうか?
私を拒まない人と結婚できる確信はありましたが(20話参照)、「拒まない」ことと「好き」であることとは同じではありません。
さて、次回から、いよいよ婚活ヘンは最終章。
出会いと別れを繰り返し、尻鳥を待ち受ける最後の運命は……!?
(ダーリン、アイスの棒こんなとこに置いちゃダメでしょ!)
ごめんね。ハニー、愛してる
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