オタク、家を買う?
もしも私がオタクでなかったら、
まだ見ぬ結婚相手のために先に家を買ったかも知れません。
30年ローンで。
(えーっ!?)
そういう行為をする人(恐ろしいことに実在すると聞きます)には、
たいてい次のような三つの理由があります。
1. 自分の意気込みや、能力のアピール(建前)
2. 上記のような自分である、と幸せに思い込むための自己満足(本音)
3. 器を作れば中身がやってくる、と信じるオカルト的思考(幼稚)
なんて愚かな行為、と、普通の人は思うでしょう。私も愚かだと思います。
問題なのは、私がそう思う理由は、普通の人と違うからです。
普通の人なら、
「結婚できる保証もないのに取り返しのつかない行動をするな」とか、
「伴侶の同意を得ないで重大な決定をするな」とか、
「そんなお前に来る相手がいるか」とか、
「とにかく馬鹿」とか、そういう理由でその行為を非難するでしょう。
しかし私は違います。
「気持ちはわかるが、どうして相手の好みを考えないんだ!?」
そう思ってしまうのです。ズレてるでしょう?
「事情」ならともかく、「好み」って(笑)。
オタクの好みは狭いので、好みの違いの重大さならオタクには判ります。
そして、私がそんな愚かな気持ちがわかるわけは。
私もしたからです。
家を買うのと同じくらい愚かな行動を。
(何しちゃったの!?)
ただし、オタクから見れば愚かな行動、という条件付きですが。
実家のかつての私の部屋には、マンガ、ゲーム、本、薄い本、ビデオ、DVDが溢れていました。PC本体、ゲーム機本体等のハードも沢山ありました。だいたい数千点のオタグッズの中には、古参のオタクにふさわしく、とんでもなくレアなものも数多くありました。
溜めも溜めたり25年分かあ。なんまんだぶなんまんだぶ。
私のしたことは、カンのいいかたなら、もう、だいたいお分かりですね。
そう、ほとんど処分しました。パーティを申し込んだ頃から、少しずつ。
売ったのではありません。図書館に寄贈するか、捨てるか。
貴重なものは、ほとんど他のオタ友にあげてしまいました。
残ったのはひとつの押入れに収まる程度。それも、売ってもそれほど値段がつかない個人的な思い入れがあるものだけです。
なぜそんなことをしたのか、と問われれば、上記の「三つの理由」を挙げて答えるでしょう。建前・本音・幼稚、それだけです。
私がオタグッズを処分したことは、いわゆる「断・捨・離」などではありません。何せその言葉自体がまだ生まれていない時代ですから。
※ご注意 別に「断・捨・離」を軽んじているのではありません。私にはご立派な理由などなかった、と言っているだけです。
もう少し突っこんで問われれば、オタクの特質のうち、コレクターである面に虚しさを感じ始めた、そして、オタク趣味に費やしていた「有限な時間と空間」が惜しくなった、といったところでしょうか。それがあれば、結婚生活のリソースに不自由することが少なくなるはずですし。
また、「幼稚」の範疇に入るオカルト的な理由ですが、私はオタクであることを、ある種の「呪い」と捉えていました。それが証拠に、オタグッズをあげるオタ友は、そのオタ友がオタクとしてダメならばダメであるほど安心したのです。
エンガチョ切ったような気がして(笑)。
もちろん、私はオタクを完全に辞めるつもりはありませんでした。
オタクの種類にもよるとは思いますが、私の場合はネット・マンガ喫茶・図書館でかなり満足できることが判りつつありました。
ああ、そうそう。
特に「虚しさ」を感じてしまった、ある出来事を語る必要があります。
当時私は、不定期に刊行されるとあるマンガ雑誌をよく買っていたのですが、あるとき書店に並んでいたその雑誌が、もう買ったのか、まだ買ってないのか、どうしても判別がつきませんでした。何しろ大量にマンガを読んでいた頃ですから。
とりあえず買っておこう、買い逃したらもう読めないかも知れない。そう考えた私はその雑誌を購入し、家に帰ってゆっくり最後まで読みました……
しかし。
最後まで読んでも、前に読んでいたかどうか判らなかったのです!
なんとマヌケな!
そのとき私は気付いてしまったのです。私にとってこの雑誌は、すでにその程度の、本音ではどうでもいい存在になってしまっていることを……
そしてそれは、すべてのオタクコンテンツに対して、それほど興味を持てなくなりつつある証拠ではないのか。
そう考えてしまったのです。
捨てられるものなら、捨てるべきだと、思ってしまったのです。
……オタクとしては、伴侶のないまま家を買うほど愚かな考えだと判っていても。
さて、パーティ前に私がしたこと、やらねばならぬことは、もちろんオタグッズの処分だけではありません。
私は対パーティ戦略を練っていました。
何せ初めての婚活パーティです。まずは空気に慣れることが目標です。
明るく楽しく、自慢しない語らない、相手に興味を持つフリをする。
勝利条件は……ガッつくのは逆に悪印象だと思うし、まあ、メアドのゲット3件以上で大成功、という所でしょうか。
二次会には、ぜひ参加したいところです。Zの案内には何も触れてないので、おそらく公式なものではないのでしょう。先に知っておいて良かった。もし知らずにパーティ後に予定を入れていたら、参加できなくなるところでした。当然、現金などの用意も準備できるわけです。気になる人がいたら、「二次会に行こうよ」と誘うこともできる。その返事で、相手のノリも推し量ることができます。
何ごとも情報収集は大事ですね!
対ライバル作戦はどうだろう?
これは……考えても仕方ありません。なぜなら勝ち負けで言ったら、
ん、待てよ……?
だったら逆に、こちらからライバルに話しかけるのはどうかな?
パーティに慣れてそうな男性に後から声をかけて、情報収集をする。「二次会の存在」みたいな重要な情報が得られれば最高だな。よし、これでいこう!
(それでアイツに声かけたのかあ……)
うん。あの出会いは、偶然にもほどがあるよね。
もうすぐ君と会えるよ。ハニー、愛してる。
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