結婚ヘン
幕間
鬱って漢字さえも難しいよね
平成21年3月17日、それは結婚して3年後のこと。
とあるJR駅から徒歩数分の、繁盛してるんだろうな、と思わせる大きな建物。
その、やけに調度品の豪華な一室で。
白衣を着た精神科の先生は、大型犬を思わせる風貌を特に崩すこともなく、淡々と私に告げました。
「貴方は、いわゆる鬱病ですね」
(えーっ、そこから話を始めるのぉ!?)
「うつ、ですか」
「治療にはかなり時間がかかります」
「はあ……」
そうだったのか。
風邪が治らないなあ、悪い考えが頭を離れないなあ、などと思っていたのですが、まさか本当に「うつ(旧型)」だったとは。
さて、うつに罹った人には様々な
うつになった他人をより理解できるようになる、モラハラな言動に敏感になれる、嫌なことを断る言い訳に使えるようになる、症状が軽くなるときには生の実感を感じる、支えてくれる人への感謝が再確認できる、等々。
※ご注意 もちろん冗談だから本気にしちゃ困りますよ!
私にとっても、うつになったことは、デメリットばかりではありませんでした。
とは言うものの、当たり前ですが、できれば、うつになりたくなかった。
でもそれは、避けようのない必然的な運命だったのです。
そう、結婚が原因の。
もちろん、妻には一切の責任はありませんが、大きな原因と結果の流れが、幸せだったはずの新婚生活を少しずつ歪ませていった結果だったのでした。
決して誤解しないでください。私は決して不幸ではありませんでした。愛するひとがいるというのは、人生の半分が必ず幸せということです。残り半分がゼロになったとしても、幸せはゼロになりようがないのです。
うつになるというのは、とても貴重な体験でした。
色々なことを知ることが出来ました。
みなさんは、うつになった人が自死をなぜ選ぶのか、考えたことがありますか。
私は「うつ」としては軽い症状でした。しかし、それゆえに。
谷底を覗き込んだ者は、落ちた時にどうなるのか語ることが出来る。
しかし、人生のすぐ隣に谷底があることを知らない者と、
谷底に落ちてしまった者は、たいてい何も語ることができない。
うつになって自死を選ぶ人は、死にたいと思って死ぬとは限りません。
死にたくないと思いながら、でも死ななきゃいけないのかも知れない、と思うこともあるのです。私は幸いにして(感謝を!)その段階に至ることはありませんでしたが、不幸にも至ってしまった人は。
だから、死ななきゃダメなんだ、と言って死ぬのです。
死にたくない死にたくない、と思いながら。
なんて悲しい!
だから、周囲にとってその人が、どれだけ幸せであるように見えても、まったく死ぬような理由などないよう見えても、自死を選ぶときがあるのです。まるで、月曜日に仕事に行くかのように。
それにしても……
私にとって、うつになる前に「うつ」について理解があったのは、とてつもない僥倖でした。うつを「甘え」と切り捨てる人は実在します。私がもしそういう考え方の人であったとしたら、きっと自分が生きていることを許せなかったでしょう。
情は人の為ならず。
さて。
私が時間を少し飛ばして、この話から始めたのには理由があります。
私たちは今でも「新婚さん」です。仲良く暮らしています。
そして平成18年の当時は、さらにそれを上回る、
「ちんちんかもかも」としか言いようのない甘ぁぁーーい生活でした。
(みんなも結婚すればいいのにー)
※ご注意 「ちんちんかもかも」の意味を知らなかったら、ちゃんと調べてね!
いやらしい意味じゃないからね!
ほんの少しの苦味や塩味は、甘みをより引き立てるもの。
そう、これから私が書く新婚時代のテキストを読む際は、ぜひ。
こんなに幸せそうなのに、結局うつになっちゃうんだよな!
と、思いながら読んでいただきたい。
そうすればこそ、私の甘い話はいっそう引き立つことでしょう。
あなたの口の中が、新婚さんスイーツでいっぱいになってしまいますように。
次回からまた平成18年へ、話は戻ります。
さあ、砂糖を吐きなさい。
(うえーっ、甘いものよりお酒ーっ)
ハニー、愛してる。
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