夢の欠片の甘い毒

 私よりも何倍もモテパワーを持っているはずなのに、

 あきらめてしまった男たちに

 婚活9重苦クックーの私にものは……


 いいえ。その表現は正確ではありません。


 彼らに、私にもの。


 それは……


 それはです。

「俺は女性をゲットできる優れた男だ」という自信です。


 私はその自信を持っていませんでした。


 それゆえに、Zからスパルタ式に鍛えられた(Zにはそのつもりはなかったと思いますが)ために得た、そのわずかな進歩が嬉しかった。


 電認作戦アタッコ・ランポを駆使したおかげなのか、慣れただけか。

 メール・電話・会話のコミュニケーション能力が、少しずつ、本当に少しずつ、うまくなっているという実感がありました。


 その感覚は、とても嬉しかった。


 それは、ゲーム的に言うのなら、3桁レベルでのレベルアップの感動よりも、1桁レベルでのレベルアップの感動のほうが大きい、ということです。私のレベルアップ実感は、私のモテ能力が低レベルがゆえに、とても大きかったのです。


 女性から拒まれ続ける苦しみを、癒すほどに。


 これが! これがっ!

 始原なる力ヴェルジネ・アールマの本当の威力パワーだっ!!


「この武器……これこそ俺の、俺だけの得意技スキルだ……っ」


 そう呟いた私は、忘れていました。とあるお約束を。

 えてして、主人公の得意技は、ラスボスには効かないということを……!


(なあに、ラスボスって?)


 さあ、何だろうね(笑)。


(小〇幸子じゃないの?)


 違います(笑)。


 さて、「始原なる力ヴェルジネ・アールマ」のエネルギー源となるのは、前に語った夢の欠片かけらです。婚活9重苦クックーの自分が、一人前の、男として、夫として、振舞うことのできる姿、その未来のマボロシが、夢の欠片かけらです。


 そして、夢の欠片かけらには、さらに秘められた力があります。

 それは、婚活を続けていくその原動力エネルギーとなるもの。

 その持ち主の体を浮かし、結婚へと飛行させる力。

 婚活を続けられる人なら、おそらく誰もが持っているパワーのことです。


 それは、簡単に言ってしまえば、「婚活そのものを楽しむこと」。


(私も楽しかったよ)


 そうだね。私もそうだった。

 苦しいばかりではなかった。自分の進歩だけが、やりがいのすべてではなかった。

 婚活は楽しかった。


 今ならそう素直に言えます。


 だからと言って、ずっと続けたいと思わなかったけど。


 そう。


 Zには、をしている会員がいたのです。


(いたいた。そういう人がいちばんイヤだったなー)


 何でそんなことがありうるのか。その理由とは……


 実は、夢の欠片かけらのパワーには、甘い毒が混じっていたのです!

 それを食べてしまった者を、いつまでもいつまでも、気持ちのいいマボロシの世界に閉じ込める、甘い甘い毒が……!


 ここで、少しまとめておきましょう。

 夢の欠片かけらのパワーには、次の3つがあります。


 1. 成長の実感を与えてくれるマボロシ

 これはたぶん、私のように劣等感が強い人だけが持ちうるバワーです。


 2. 婚活を楽しむこと

 長く活動を続けられる人だけが持ちうるバワーです。

 ほとんどの人は、このパワーしか持っていません。


 3.マボロシの世界に閉じ込める甘い毒

 その恐るべき毒の正体とは……!?


 ……それは次回にて語りたいと思います。



 ハニー、今日のタマゴ焼き、アミ入れてみたんだけど、どうだった?


(すっごいおいしー)


 明日は洋風ふわふわチーズ入りだよ。毒は入ってないよ。


(えー、お酒飲んでいい?)


 ハニー、愛してる。

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