Everlasting On-line 1
7月26日。
この日付を忘れることはないだろう
この日、あるゲームが正式サービスとなった。
Everlasting On-line 通称、EO
このゲームは俗にVRMMOというもので昔から小説やアニメなど日本のサブカルチャー内で人気のあるものだった。その多くの人たちの夢が形になったのは一昨年。しかしソフトとハードの値段があまりにも高く、ユーザーが少なかったため直ぐにサービスが終わってしまった。
しかし今回の《EO》はソフトとハードの体験版として限定無料配布、また買うとしても中古車並の値段で済んだため、正式サービス開始はプレイヤー数1万5千人を越え。そして1人を除いて全員がそのままデスゲームへと導かれた。
「なんとか間に合った…」
家に帰ったのは夕方の5時直前だった。帰宅するだけで掻いた汗をシャワーで流し、濡れた髪が気になったがベットに行きゲームへログインする。
正式サービス開始にギルドマスターが送れるわけにはいかない。
慣れた感覚で目を覚ます。
すると懐かしい光景が目の前にあった。第1の町『冒険者の町』。如何にもな感じの茶色を基準にしたファンタジーな町並み。
そうそう、ここから始まったんだっけ。
周りには見知らぬ人たちが自分と同じ
ギルドメンバーには夜8時に集合するように言ってあるから、それまでレベルを上げるとしよう。その途中で誰かに会うかもしれない。
スタートダッシュ特典として5レベルまでは同じフィールド上にいる所属ギルドまたはパーティ全員が同じ経験値を貰え、しかも経験値2倍なのですぐに4レベルになった。
見かけないが、他のメンバーがどこかにいるのだろう。
周りを見渡すと、何やらメニューを開いて慌てているおじさんがいた。いや、服装と行動以外はオジサマっと言った感じか。
「どうされたのですか?」
「ログアウトコマンドがない!ここに前はあったはずなのに!?」
ダンディーおじさんもβばんからやっていたのだろう。自分も確認すると確かに無くなっている。
「本当ですね…」
「まさか、閉じ込められたんじゃ!?」
「システムの不備ではないでしょうか?運営への連絡はされましたか?」
「もうやった!そうしたら、『ゲームに不備はございません』って!!」
「では、街以外でのログアウトが出来なくなったとか。一旦、町へ戻りましょう」
「あ、ああ」
私は見た目と中身が一致しないおじさん一緒に街に戻ることにした。
町に戻ってもログアウトの文字が現れることはなかった。代わりに、街が大混乱になっていた。
「や、やっぱり、僕たち閉じ込められたんだ!?」
おじさんのパ二クり具合がピークに達していた。そのおかげで私はある程度平静を保つことが出来た。おそらくこの光景を見た誰もが落ち着くのではないだろうか?
見た目オジサマな男が茶色基準の冒険者の格好をした上に、パニクっていて極め付けに一人称は「僕」。正直、かなりの違和感がある
他のメンバーは大丈夫だろうか。
おじさんを宥めながら他のメンバーに連絡をしようとする。すると、大量のメールやチャットが届いていた。忘れていたが、そういえば最初は通知なし設定だったんだ。
一番最初のメールは運営からだった。
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
シフォン 様へ
Everlasting On-lineの世界へようこそ!
皆さんには命をかけて参加していただきます。
ログアウト方法は『ゲームクリア』だけ。
死に戻りは出来ませんので気を付けてください。
それでは楽しいゲームライフを!
運営
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
どこか狂っているメール。しかし私は既視感を覚えた。
そうだ、この感じ…この人を見下してまるで自分と同じだとは考えたこともないような感じは、今まで十何年も味わってきたものだ。
家族に私の味方は居ない。それだけ優秀な兄がいて、兄もどこか私を見下していた。唯一、兄より得意だった絵の勉強を頑張って、今の美術大学で一人暮らしが始まった時はあまりの嬉しさに泣いてしまったほどだ。
ゲームクリア。
出来るのか?私に
彼らを見返すことが出来るだろうか。
他のメールを見る。他は全部ギルメンからのものだった。
『ギルマス、一体俺らはどうすればいいんだ?』
そうだった。
私はギルマスだ。少なくとも彼らを助けなければいけない。
『予定通り、夜8時に東の広場に集合してください』
私は一括でメールを送ると、少し落ち着いてきたおじさんの顔を見る。
「私は1度、ギルドで集合します。よろしければ一緒に来ませんか?」
「ギルド?あぁ、そうか!!………いや、こっちも今、ギルマスから連絡があって集合することになったからそっちに行くわ」
「そうでしたか。ではここでお別れですね」
「あぁ、さっきはありがとな。ついでにこれも何かの縁だし、フレンド登録しておこうぜ」
「いいですよ。お名前はなんですか?」
私はプレイヤー検索の画面を開く。
「僕はギルド『天地雷鳴』に所属するクロガネです」
おじさ…クロガネさんはお辞儀をする。
本当はこちらも自己紹介しないといけない所だが、少し待って欲しい。
君は、いやあなたがクロガネ?
見た目が大きく変化しているギルメンに私は今日一番、困惑した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます