ショウの専属侍女の1日 中編 その1
私はショウ様を起こすため、部屋へと向かいました。
ショウ様はまだ眠っておいでです。とても幸せそうな寝顔を見せていて、こちらも少し起こすのを躊躇ってしまいます。
「ショウ様、朝でございます」
「………」
ただ呼び掛けただけでは、全くお目覚めになる気配はありません。
「ショウ様、朝でございます」
「ん、んんぅ…」
お体を軽く揺すりながら呼び掛けると、ショウ様は少し顔を顰められて、ご自身の主張を訴えになります。このようなところは年相応なもので可愛らしくあります。
「ショウ様、おはようございます」
「ん…うぁ…?…おはよう、せれな…」
「お食事のご用意は既に出来ております」
「ん…わかった…」
ショウ様はベットから降りて立たれましたが、まだこっくりこっくりしていて、完全には目覚め切っていません。私はショウ様の御召し物を丁寧に、しかしお体が冷えないように素早くお替えします。ショウ様はお顔がとても整っておいでで、髪や肌も眩いくらいにお綺麗なので、失礼ながら精巧な着せ替え人形を相手しているような気分になるときがあります。
「今日はまた一段と外は冷えているので、もう少し着込みましょう」
「うん…」
「先ほど外を見た時は、雪が降っておりましたよ」
「うん………えっ!ゆき!?」
ショウ様は『雪』の一言に目が覚めたようで、小走りで窓の方へ向かわれます。カーテンはショウ様を起こす前に開けてあるので、外の様子がよく見えます。一般の人が使用しているガラスの大抵は、この時期に水滴が付いて曇るそうですが、王宮の者は全てしっかりとした造りになっているので、そのようなことはありません。
「わぁ~。ゆきだぁ~」
口を開いたまま、目を輝かせて外をご覧になるお姿は、幼さを感じさせて思わず抱きしめたくなります。
「ねぇ、おそとにいこう!」
「はい。今日の午後はお散歩しましょう」
「それじゃあ、おそいよ!ゆきがなくなってしまうかもしれないよ!!」
「しかし、午前中はお勉強をするのでは?」
「べんきょうはごごからでもできるけど、ゆきはまってはくれないの!!」
「…わかりました。ではレイス様が良いと仰ったら行きましょう」
我儘を言われるショウ様を可愛くはあるのですが、見境なくなんでも仰られることを叶えていては、傲慢な人になってしまいます。特に上に立つ者は気を付けなければなりません。どこまで我儘を聞いていいものかは難しいところです。ですが、まぁ
「わかりました。早速行きましょうか」
「わーい!」
レイス様がショウ様の反対をするお姿は想像できませんが。
その分私がしっかりしなければなりません。
私達が朝食を終えた後に、出仕してきたレイス様に許可をもらったショウ様は私の方にも笑顔を向けられます。
もう少し厚手の御召し物をご用意しましょう。
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