僕(ショウ)ん家の食卓事情
夕食の時間。
王族も朝食は家族皆で食べるが、後の夕食などは各自の自由である。僕は朝食も自分の部屋で取っているけど。僕が行くと父上が食事の間に来ないことを知っている。
僕たちの食事はいつも部屋の真ん中に僕が使っているベットと同じサイズのテーブルを置いてそこで食べている。僕たちと言うのは僕とレイス、セレナの3人だ。本当は主と従者、侍女が一緒に食べることは問題があるらしいが、何度か無理を言って同じ食卓を囲むようになった。乳母のクレランは仕事を辞めさせたわけではないが、家族との時間を優先させるように言ってあるので別室で食べているだろう。
ちなみにテーブルを囲んでレイスとセレナは床に座り、僕だけが椅子に座っているのは主従関係によるものではなく、単に僕の背が小さいからだ。くそぅ。床には絨毯が敷いてあって、土足厳禁なので綺麗…なはずだ。「そろそろ取り払いましょうか」とレイス入っているが外す気はない。畳が無くてもせめて床で横になりたいものなのだ!部屋での土足だけは何が何でも阻止してみせる!!
「ねぇ、レイス」
「どうかしましたか?」
「ここで食べるときくらい自由にさせてくれないかな」
「ショウ様」
「うん」
「またフォークの持ち方が少々おかしいです」
「…はい」
料理人を目指している僕が現在の苦痛としている時間はこの食事の時間だ。はっきり言って料理を楽しむ余裕がない。形式に雁字搦めにされたテーブルマナーとナイフやフォークのせいだ。
前世でも必要に迫られない限り箸を使用していたこともあって、中々上手くいかない。この身体も箸に慣れ過ぎてしまったのか!…まぁ、子供のころ箸が上手く使えずに苦労した経験があるけどな。誤解しないように言っておくと、この世界ではまだ箸を見ていない。お米があるならありそうだけど、やはり他国のものなんだろうな。
「はぁ」
「どうかされましたか?」
「ううん、どうもしないよ。きょうもセレナのりょうりはおいしいね!」
「ありがとうございます。今回はショウ様が好きなオニオンスープにしてみました」
「うん、とってもおいしいよ!ありがとう!!」
そう。料理なのだが、それぞれで食事をするときは各自の料理を用意しなければならない。レイスが料理人を寄越そうとしたが、セレナが出来るため彼女に任せてある。セレナは本当に料理が上手い。他にも洗濯や片付けも他の従者よりも1つや2つ頭が出ていて、これで9歳というのだから末恐ろしいものを感じる。いや、僕が生まれた直後からお世話になっているから6歳か。間違いなく天才と言えるだろう。いや、多すぎるだろう、天才。もしかしてこれが普通なのか?
「次のお食事に希望はございますか?」
「うーん。」
米!おにぎり!カレー!海鮮丼!から揚げ!ハンバーグ!寿司!うどん!そば!ラーメン!味噌汁!天ぷら!肉じゃが!ハンバーガー!ピザ!フライドチキン!チャーハン!刺身!とんかつ!牛丼!親子丼!オムライス!グラタン!たこ焼き!お好み焼き!フライドポテト!シチュー!ラザニア!パエリア!マァァァァァボォォォォォゥドォォォォォゥフゥゥゥゥゥ!!!!!!!
「いまはとくにないかな」
なぜこの世界…この国には焼く!煮る!蒸す!以外の概念がここにはないのか!!いや、セレナの料理はそれでも美味しいけど!!
「わかりました。何か希望がありましたらいつでも言ってくださいね」
米!おにぎり!カレー!海鮮……
「うん。あ、そうだ。レイスのすきなものにしようよ!」
「え、私ですか?」
「うん。れいすはなにがすきなの?」
「私は、…そうですね、トマトスープです」
あなたは本当に貴族なんですか!?なんとなく庶民的な感じがする。
とりあえず、明日の朝…昼かな?まぁ明日のどこかでトマトスープが出ることが決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます