魔導初心者、目指してます
魔導の勉強が始まって1週間が経とうとしている。
僕の手の平の上にある小さな宝珠がその真価を発揮せずにただ、部屋の照明の光を浴びて薄く輝いていた。
これでも十分輝いているんだけどな。
この宝珠はどの種類の魔素でも受け付けて発光するらしい。部屋の照明に使われている宝珠の縮小版で冒険者や旅人の必需品だそうだ。小さくてもっとも単純な宝珠なので必要となる魔素も少なくても大丈夫らしいが…
「あぁ~。やっぱりむりだ」
「いえ、まだ始めたばかりですし、ゆっくりやっていきましょう」
「だって、もう1しゅうかんにもなるのにまだ“まそ”すらもつかめていないんだよ」
「何事も初めが1番難しいものです。1度出来ればあとは簡単ですよ」
「それはわかっているんだけどさぁ」
そう、まだ体の中にあるという魔素の存在すら認知できていないのだ。大体なんなんだ、魔素って。ゲームから引き継がれているステータスには、あの世界で最大だったMPがそのままあるけど、これが魔素なのか?でもこのMPって雷系以外の魔法にも使えていたし…
魔素は基本は1人につき1種類らしく、王族の血を持つものは雷の魔素なのだと教わった。
「れいす、もう1どまそを見せて」
「はい」
レイスは返事をするとゆっくりと自分の魔素を手の平から出して見せてくれた。レイスの魔素は火なので小さな炎が僕の前で漂っている。
「うーん」
やっぱり、見るだけでは分からないな。魔法と区別がつかない。いや、魔法は決まった技しか出せないから自由度が違うという意味では区別がつくのだが。
そもそもまだこの世界に転生して魔法を使用したことがない。以前も話したと思うが、僕の周りでは目に言えないが気配が1人分多いのだ。それがいつでも僕の周りにいる。その気配は時々レイスと接触しているみたいなので、レイスの家来かなにかだろう。だから気にしないようにして、監視されるストレスを減らしているのだが、そのせいで下手なことが出来ない。
それにMPと魔素が同じならいなくても察知される可能性があるしな。
「うーん。やっぱりみてもわからないな。ありがとう」
「まだ続けられますか?」
「うん、もうすこしだけね」
やはり見るだけでは難しいな。触ることが出来ればいいのだが、火を触ったら大変なことになるし…………ん?
「れいす」
「はい」
「まどうって、だれにでもできるの?」
「ええ、量は人によって大きく異なりますが、魔素がない人間はいませんし、小学校の教育内容にも含まれますので、この国の多くのものが使うことが可能です」
「しょうがっこう!!」
あるんだ、小学校!!学校はあるとおもったけどさ!!小学校って!!
「小学校に興味がございますか?」
「え、えー…えへへへへ」
「小学校はたった2年ですが、生活に必要最低限の知識を学ぶので、国が誰でも1度は通えるようになっています。ショウ様も6歳になったら通うことになります」
「そ、そうなんだ。たのしみだなぁ~」
しかも6歳からかよ!もうこれも絶対、あいつ(神様)の意図だよ!!
って、話がずれたな。
「じゃあ、セレナも使えるんだ」
「あっ、いえ。彼女は少々、事情がありまして学校に行っていませんから…」
「あっ……」
そうだ、彼女はまだ彼女自身が6歳だった僕が生まれた時から付きっきりで世話を見てもらっているから学校に行っていないんだ。
「ごめん、せれな」
「いいえ、滅相もありません。私は自分の意志でショウ様にお仕えしております」
「…そっか。ありがとね」
「はい!」
彼女は肩口で揃えられた綺麗な露草色の髪を揺らしながら、いつもの笑顔を見せてくれる。そこに陰りなど存在しなかった。
「それにたぶん使えますよ」
「あ、そうなんだ」
「いや、待て。私はお前が使っている所を見たことが無いぞ」
「はい、私も使ったことがありません」
「せれな、どういうこと?」
「ええとですね。申し上げにくいのですが、最初にレイス様が魔導を見せてくれた時に感覚的に理解できたといいますか、『出来そうだ』と思ったんですよ」
「「………は?」」
「おそらく、こうですよね」
そういって、セレナが手を前に出すとそこから水が現われ、紛れもない球の形になった。
「よし、やっぱり出来た」
「「……………」」
「あれ?どうされました?……あっ」
「「……………」」
「申し訳ありません!ショウ様!!」
「「……………」」
「……ショウ様?」
「…大丈夫だよ。おめでとう、セレナ」
「…ありがとうございます」
まぁ、流石に主より先に出来たからといって何の問題も無いよ。というかそれ以前に、1度見ただけで出来るようになるのを一般的だと思っていないのでプライドの傷つきようがない。
「「「……………」」」
天才って怖いなぁ。
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