祝、魔導初心者!!

 「そういえば、ショウ様。何か考えがあってセレナに魔導が使えるか尋ねたようですが、いかがされたのです?」


 「あ、そうだった」


 セレナの才能に驚愕を受けて忘れていたが、考えたことをやってみよう。


 「せれな、ちかくでもういちどまどうをみせて」

 「わかりました」


 セレナは僕の前でしゃがんで見えやすい位置に手をおき、もう一度、水の球体を作って見せた。さっきよりすんなり作っている気がするが、もう驚かないでおこう。


 「そのままうごかないでね~。………えいっ!」

 「えっ、しょ、ショウ様!?」

 「何をなさっているのですか!?」

 「まそをじっさいにかんじてみようとおもってね」


 僕はセレナの作った水球の中に手を突っ込む。驚いたからか、僕の手と言う異物が入ったからか判らないが、少し形の崩れた水球はすぐに綺麗な球状に戻った。


 「でしたら、私に頼めばよろしいものを!セレナはさきほど使えるように使えるようになったばかりなのですよ!?」

 「いや、れいすのぞくせい『ひ』じゃん」

 「あっ………」

 「ショウ様、大丈夫なのですか?」

 「うん、だいじょうぶだよ。せれな、このままみずをうごかせる?」

 「は、はい…やってみます」

 「………」


 僕を包んでいる水は徐々に動き始め、大きな円を描く。ゆっくりと流れる水は少し暖かいように感じる。


 「―――――――――――――――」


 目を閉じ、魔素の流れ、そして魔素と言うものを感じてようとする。


 魔素は生物に欠かせないもので、その属性は親から受け継ぐものらしい。まさに血や遺伝子のようなものだろう。


 「―――――――――――――――」


 今、手で感じているのはセレナの水属性の魔素だ。王族の血が流れている僕の魔素は雷のはず。


 だから僕の体の中からこの感覚に似たものを探す


 「―――――――――――――――」


 「―――――――――――――」


 「―――――――――――」


 「   」


 見つけた。


 手を水球から抜く。手は濡れたままだが、どうせ僕の魔素は雷だ。電気も流れやすくなるだろう。


 さっきまで使っていた照明用の小さな宝珠を手に取り、魔素を流す。


 「   」


 気をつけなければ分からなくなってしまいそうなほど、感覚が薄い。見失わないように、しかし集中力をかなり消費するため時間をかけることは出来ない。


 徐々に手のひらの宝珠が自ら光り出す。魔素を動かすことが出来た証拠だ。


 それを確認した瞬間、宝珠は輝きを失った。魔素の供給が切れてしまったのだ。


 「ふぅ~」


 頬を大粒の汗が流れ落ちる。これはかなり難しい。でも


 「なんとか、できたな」


 「おめでとうございます!ショウ様!!」


 「うぉ!?」


 セレナが感極まった様子で、僕を抱きしめてくる。…うれしいけど、なんだか恥ずかしい。しかもまだ感覚を掴んだだけなのだ。この世界に来て、1週間も成果なしと言うのは初めてだったので、珍しく達成感を感じてはいるが。


 「………」

 「れいす?」


 いつも大袈裟なくらいに褒めてくるレイス、何も言わないでただこちらを見ている。


 「おーい、れいす~」

 「レイス様?」


 セレナの抱擁をやめてもらい、レイスに近づく。


 「れいす~?……あ」


 こいつ立ったまま気を失っているぞ…

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