24話『再会』
「和也……、ホントに寝てないで大丈夫?」
病院を無理やり退院した笠持和也は、特時の花田に迎えに来てもらった車で特時の捜査本部へと向かっていた。
笠持は効かなくなった右目に眼帯をし、腹部に包帯を巻いて、右足はギプスで固定されている。
満身創痍に見えたが、彼の表情に不安や苦痛はなかった。
「大丈夫さ。体力は十分回復したし、腹を撃たれた痛みももう随分和らいでいるからね」
爽やかな笑顔を浮かべる彼は、捜査本部に着くなり特時のメンバーに招集をかける。
全員の見識を共有しなければならない。
そして笠持はその後、大橋のもとへ案内させた。
彼にも話がある。
花田に案内されて到着したのは、取調室だった。
どうやらもう目が覚めていて、さっそく質問攻めにあっているのだろう。
さて、取り調べをしている刑事には申し訳ないが、一旦中断してもらわなければならない。
大橋には、会議まで体力を残しておいてもらわなければいけないのだ。
「取り調べ中失礼するよ。白井さん、全部中断して会議室に集まってくれ、大事な話がある」
「え? は、はい!」
取り調べをしていた白井は、直ぐに返事をして取り調べをしていた資料やノートを片付けていく。
そして、少し疲労気味の大橋が、笠持と雨宮の存在に気づいて驚いた。
その顔はすぐに笑顔へと変わってゆく。
「笠持さんに雨宮さん! またお二人に会えて嬉しいです!」
立ち上がりお辞儀する大橋に、張り詰めていた雨宮と笠持も思わず表情が緩む。
昨日一日を振り返るだけでも、何度も生死の境をともにくぐり抜けた仲なのだ。
「あぁ、僕もまた会えて嬉しいよ。心配かけてすまなかった」
「ふふ、結構元気そうね。修羅場を潜ってトラウマになるかとも思ったけれど、オジサン結構タフなのね」
「はは……出来るだけ思い出さないようにしているだけですよ。全部夢みたいなものだって」
雨宮の言葉に、苦笑いする大橋。
表情には出さないだけで、相当堪えているらしい。
しかし、大橋の精神状況に逐一配慮している余裕は笠持たち特時には無かった。
「悪いんだけど大橋さん。これからしっかり、全部事細かに思い出してもらわなくちゃならないんだ」
「事件が解決するまでお願いオジサン」
雨宮が手を合わせて頭を下げる。
もともと拒否権のない大橋だが、可愛い女子高生に上目遣いまでされて断れるような鋼の心は持ち合わせていなかった。
勢いのまま頷いた大橋は、笠持と雨宮のあとに続いて会議室へと向かうこととなる。
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