ゴミ屋敷というと、老人が集めたゴミに埋もれているようなイメージだが、この作品の舞台となっているゴミ屋敷は、そういうイメージのものとは全然違う。やむを得ない事情によって落ちるところまで落ちかかっている……いわば、社会のゴミ。その中でも価値のあるゴミだけが、そこに住むことを許される。イレギュラーな存在も重要な役どころであるが、それは読んでのお楽しみ。魂の輝きのようなものを秘めたゴミたちと主が織り成す人間ドラマは、軽妙な顔をして意外と深く重い。願わくば、私自身も価値あるゴミとして認められたい……!
あたり一面に散乱するゴミと、ゴミの中に住む人々の様子がありありと浮かんでくるようです。実直に書かれた文章で人間の醜さ、優しさ、感情を紡いでいます。そして、「俺は価値のあるゴミしか拾わない」このフレーズに打たれました。汚いゴミの中で光るもの、それを教えてくれます。
ゴミを拾う男がいる。ゴミだと思いこむ者がいる。座り込み、項垂れる人間がいる。この物語を読んだとき、貴方は何を思うのでしょうか?きっとそれが、貴方の正直な心の欠片。まるで自分の一部をのぞき込むような……ゴミ屋敷に転がる鏡にご注意を。
タイトルとキャッチコピーから、現代ドラマでもホラーまじりかなと想像していたのですが、ゴミについて考え、拾っていく彼らの姿はもがき苦しむ現代人そのもの。ペットボトルでもちゃんとラベルとキャップに分別して濯ぐ。ゴミ出しは指定の曜日を守る。一見普通の生活のようであり、けれど異常が紛れ込んでいた。大きな失敗をした人間たちとリサイクル、そしてゴミ。あなたはこれを読んでどのような価値を見出しますか。今を悩む人に問いかける現代ドラマです。
『ゴミ』という捨てられてしまうものに焦点を当てることで、多種多様な、しかしそれゆえに社会からあぶれてしまった人間達の人間模様が巧みに表現されています。また、単なるキャラクター小説の域を脱し、読者自身の内省を促進するような表現が随所に見られ、読ませる力が強い小説だと感じました。自分にとって拾うべき価値のあるゴミとはなんであろうか、考えずにはいられません。
ゴミ。それは道端に落ちている、人が無意識にそれとも意識的に落としたもの。そんなもの、既に用無しだと思っている。汚いし……(もちろん、紹介文に書いてあるとおりリサイクルをしたら活用出来るものもあるけれど)それを、彼は価値あるゴミというものだけを拾うという。彼にとって価値のあるゴミとはなんなのか。私も、ゴミを拾ってみようか。彼の事が少しでも分かるかもしれないし、環境にもいいですしね。まぁ、彼の持つ闇がどのようなものなのか、これから見られるのかと思うと楽しみです。続きが楽しみです!
モノクロ、もしくは限りなくそれに近い景色が浮かぶ。まるで、現実の底の方を浮き彫りにしたような。ゴミとして捨てられるか、それとも這い上がり、何かに生まれ変わるのか。温度は決して高くない。結末は、決して優しくないかもしれない。それでも、それぞれの結末を、あるいは始まりを見てみたいと思う。そんな作品。
もっと見る