第91話 赤色グループ本社にヴァーネルが来た
「ここが赤色グループの本社か。ここに来るまでに随分と時間がかかった」
ヴァーネルは赤色グループの本社に来ていた。
端的に言って超高層ビルである。
ちなみに、高い上にフロアがなかなか広い。
紛れもなく、民間のダンジョン企業としては日本最高レベルである。
ちなみに、本社の一番上には赤石家の居住区がある。
「この私が来たというのに盛り上がりがない。どこまでも舐めているな。まったく、これではマギアークに招待したとき、どれほど悲惨な立場になっても文句は言えんぞ」
ヴァーネルはいまだに、『槍水飛鳥と赤色グループはマギアークに誘える』と思っていた。
「私をあえて歓迎しないことで試しているようだが、悪手であると気が付かないとは、あきれる他ない」
歓迎しないことで試している。
という理屈が成立するのは、お互いにその文化が常識となっている場合だけだと思われるが、どうなのだろうか。
まだヴァーネルは赤色グループの社員と一度も話をしていないのに、その文化や前提……というと擁護しすぎか。
話をしていない人間の『妄想』に付き合えるわけがない。
要するに自分本位なのだ。
彼にとって、『マギアークに決定に従う』ということは、これまでずっと『メリット』だった。
そのため、マギアークの命令に従わないということが、『なぜ大きなメリットを捨てるのか』という発想になり、理解できない。
ほかの立場にいる人間が、その立場にいながら、どんなメリットを享受しているのかを理解する気がない。
どこまでも自分本位であり、その自分本位な主張がこれまで通ってきたのだ。
赤色グループの本社に近づいて、そのまま自動ドアをくぐって、一階に入る。
本社の一階はオープンフロアであり、フロントカウンターで受付をしている人間が何人もいる。
……とはいえ、赤色グループはかなり閉鎖的な組織なので、受付にいる女性たちは、身内に対しては笑顔を向けるが、外からやってきた人間に対しては、連れ出そうとはしないが好意的ではない様子である。
ヴァーネルはそんな受付……には行かず、近くのソファに座る。
「さて、こうしてここまで来てやったのだ。会長が来るのが当然。待っていれば来るだろう」
……一応、そう、一応、ここで言っておこうか。
受付にいる人たちは、ヴァーネルの顔を知りません!
そのため、『なんかすごいイケメンがふんぞり返ってるけど、あいつ何しに来たん?』と思っている。
そこを待ち合わせ場所にしている可能性がある上に、ソファを置いているその場所は今は
ただし、別に話しかけるようなこともない。
だって知りもしない赤の他人だから。
というわけで、ヴァーネルは待ち続けており……何なら今も、『特別な応接室に案内することもなければ、コーヒーの一つもないとは、まったく呆れている』と考えているのだ。
一体どこまで特別扱いされてきたら、こんな人間に育つのだろうか。
マギアークの国民性は謎である。
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