第29話 門越しの考察

 赤色魔法研究所は、赤色グループの最先端技術を研究するための施設である。


 言い換えると、使われているアイテムの性能はグループ内でもかなり高い。


 そうなると、セキュリティに関しても力を入れる。


 ただ、この『セキュリティに関しても力を入れる』ということが、飛鳥の基準になるのだ。


「おーおー……派手にやってるなぁ」


 飛鳥が建物から出て正門を見ると、固く閉ざされた扉に、多種多様な攻撃が加えられていた。


 ほとんどは遠距離攻撃で、正門を囲んでドカドカ撃ちまくっているわけだが、門はびくともしない。


 襲撃者が使っている装備の見た目からすると、リアリスターの発展形であるとわかる。


 ただし……。


「さすがに、90層の素材で作られた門を突破することはできないか。ほかの壁に関しても、上に張られたバリアを突破できないみたいだな。まあ、『俺基準での希少品』だっていろいろ組み込んだわけだし、それくらいの性能でも当然か」


 のんきにスキットルを取り出してワインを飲みながら、飛鳥は彼らを観察する。


「……俺の仮説は、迷宮貴族は、『莫大な魔力の確保』のために、『特定のモンスターを特定の装備で倒す』ことで手に入る『特別なドロップアイテム』を手に入れるというルールを抱えている」


 スキットルをジャージに突っ込んで……。


「そして、あいつらは、『明らかに研究が進んだ、高品質な装備を身に着けている』わけだ。しかも、幼いころから、これを前提に戦うことを前提にしているような、そんな『慣れ』がある」


 頭の中で、組みあがっていく。


「リアリスターってのは、もしかしたら、その『特別な装備』をどのように運用するのか、どんな構造になっているのかを分析した、その副産物ってわけか」


 観察していて思う。


 迷宮貴族という組織は、時折、『研究している部分につながりを見せる』と。


「そういえば、襲ってきてるやつらは全員大人……少なくとも二十歳は超えてるみたいだ。俺の仮説だと、『特別な装備には年齢制限がある』わけで……」


 頭をぼりぼりかいて……。


「『夢を追う資格をなくしたものは、現実を見ろ』ってメッセージなのかもな。あの装備の『リアリスター』っていうのは、そういうことか。特別な装備も、もしかしたら『子供』や『夢』にかかわる名前を持ってるかもしれない」


 彼らの装備を見て……。


「ただ、だからと言って、スマホを目元に装着する意義はなさそうだ。本当のメッセージを隠すために、『それっぽい皮肉』でも差し込んだのか……」


 フフッとほほ笑んだ。


「まぁ、これ以上は考えても仕方がないか、そろそろ、相手してやるとするか。なんかかわいそうになってきたし。ただ、明らかに、70層は突破できそうだよなぁあいつら。なんか、装備が普通に強いよほんと」


 ラスボスまで倒せる理不尽が、何かをほざいている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る