第32話 神々の思惑
「神もまた騙されたものの一人なのだ」
神が騙された?
どういうことだ?
「クロス。主は教会を知っておるか?」
「流石に俺でも知ってるぞ」
……まあ、行ったことはないが。
神とは縁がなかったし、結婚もしてない。
なんてったって、彼女いない歴=年齢だからね。
縁がなくてもしょうがないね。
「そうか。じゃあ教会の神への祈りが神に聞こえているのは知っているか?」
「いや、知らない」
「だろうな、なぜか主には神の鬱陶しいオーラが全く見えぬ。大体、どの世界の人間も、大小あれど神のオーラを纏っておるのに」
え?嘘?
「いや、そんなことはないと思うがな」
だって、12~1月間で日本神道、仏教、キリスト教と三つの宗教に関わるのだ。
なんでオーラが出てないの!
だが、ベーゼルも噓を言う意味などないため、もうわけわかんないよ……。状態に
まあ、いいか。どうでも。
「そうか?だが、オーラが出ていないからな……。まあ良い。それでさっきの続きだが……」
「神も騙されたってやつか」
「そうだ。人々の願いは神に伝わる。人々の思いは神に伝わる。人々の悪意は神々は知らない」
どういうことだ?
俺がそう思うと、ベーゼルはやれやれと首を振る。
なんでだよ!
「わからんかぁ……。まあ、端的に言うと、人々の悪意によって神が騙されたのだ」
なるほど!
わからん。
「まだわからんかぁ……。そうだな…人々の魔王を滅ぼしたいという願いは神に届き、人々の暴れた魔王に怯える気持ちは神に届き、それが神に伝わり、神は人に恐れをなしている、魔王を、魔王の国を、諸悪の根源を、滅することを決めたのだ」
やっとわかった。
いや、小難しい口調で、小難しい説明をされたら、わかるものもわからないんだよ。
つまりベーゼルが悪い。
……違いますか。
違いますよね、俺の理解力と読解力が足りないだけですよね。
「神々は人のためを思って、サルジニルグに雷を落としたのだ」
「だが、それは違った。もう暴れた魔王は死んでいる。まっとうな政治、まっとうな外交をしていたルナの世代のサルジニルグに雷は落とされた。神々は選択を誤ったのだよ」
「だが、人々には喜ばれ歓喜された。だから神は起こした間違いに気づかない。だが、それを憎む者もいる。そう、まっとうな政治を続けてきたルナとかは特にな」
ルナは神を今でも憎んでいる。
なのに、俺の世界は神として崇められている。
何とも皮肉な話だ。
神として崇められること、それがルナには苦痛だろう。
だからだろうか、ルナが神の話をしている時、表情が暗かったのは。
あれは気のせいではなかったのだ。
魔王が神を憎んでいる。
ありがちな構図だな。と失礼にもそう思った。
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