第21話 家族と絶縁
「バルメント。何があったんだ。」
怒りを孕んだ声で、初老の男はそういう。
「はい、父上。クレイトを殺そうとしていました。」
バルメントがそう言うと、男は苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「クレイトを?」
男は最終確認でも取るようにそう訊く。
「はい。このようなゴミ存在そのものが無価値だと」
バルメントは極めて冷静にそういう。
だが、そんなバルメントとは裏腹に男の顔は俺から見てもわかるほど、怒りに満ちていた。
「だからといって、殺そうとするのはやりすぎだ!」
「けれどクレイトは民衆からも嫌われています」
バルメントはまるで自分の
俺も、民衆に嫌われているというだけで殺すのはやりすぎだと思う。
「父上もそう思うでしょう?」
「チッ……。違ぇよ……!」
メイさんがバルメントの意見に異議を唱えるように小声で怒り交じりにそういう。
……怖いです。
「だが……!」
父が拒むようにそういう。
ちなみに、この人は俺の父ではない。
名前がわからないだけだ。
「無能力者で、民衆からも嫌われている。こんな男生きているのが大問題!殺すべきです」
「だが!……」
「実の息子を殺したくないと?」
「違う!」
父は声を
「あなたは国民を第一に考えてきたはずです。ならば、こんなのはどうでしょう?」
バルメントは部下らしきものから、書類のようなものを受け取る。
「なんだ?それは」
「国民のアンケートです。……クレイトに関してのね」
バルメントが父に書類を手渡す。
「なんだっ!これは……」
父は驚きを隠せないようだった。
何が書いてあるのか知りたいんだけど……。
「クレイト王子「第一王位継承権」剝奪に賛成が……99.8%だと?」
おお、すげぇ。
どんなことをしたらそんなに国民から嫌わるんだろう。
「そんなっ……馬鹿なっ!」
ずっと驚いているなこの人。
血圧だいぶ高いんじゃないか?
「仕方ない……。」
父がそういうと、バルメントは笑顔になる。
「でっ、では殺してもよいのですか?」
エラガンスは楽しそうにそういう。
殺していいんですか。を楽しそうに言うとか本当にどうかしてるだろ。
「いや、殺すのは許可しない。」
「そんな殺生な!……」
「クレイト。お前を……お前を……きょ、今日限りで……つ、追放だ……。」
父は、えらい歯切れ悪くそういう。
隣でメイさんが
「ジジイ、今回は特別に許してやる。」
と、また物騒なことを言っている。
怖いよう……。
「父上がいないところでお前を殺してやる!」
と、バルメントは捨て
「
「すみません。ルナさん
「わかった。出すよ『
ルナがそう唱えると、
「ありがとうございます。『
酒が抜けたのか、メイさんが先ほどの荒々しさはどこへやら爽やかな声で礼を言う。
すると掌サイズの炎はバルメントが乗っている馬車に向かって飛んでいき……。
煌びやかな布に火が付き燃える。
「うわあぁぁぁぁ!」
と、バルメントの小さな叫び声が聞こえる。
怒りをあらわにし、馬車からエラガンスと取り巻きの部下が降りてくる。
「ルナさん!今です!」
「わかった!『
こうして、メイさんは復讐を終えたのだった。
攻撃してから逃げるとか……メイさん腹黒いなあ
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