第49話 近寄る混沌

「ピーピッピッピッピッピ」


 無機質な機械音がなる。


「カッカッカッカン」


 鐘の音が聞こえる。


 タイガーウルフは倒したのに、なんでこんな音がするのだろうか。


 俺が戸惑っていると、サーガが耳打ちして教えてくれる。


「侵入者だよ」


 えぇっ!侵入者!?

 なんか、最近 侵入者多いな!


「総員!撃てぇぇぇぇ!!!」


「ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン」と無数の矢が里の入り口に降り注ぐ。


「うおっ!なんだ!なんだ!?矢?『スピードバースト』―――――!!」


 侵入者と思しき男が、里の中へと一瞬で侵入する。

 それはまさに、侵入者だ。


「お主、名は何という?」


 ベーゼルは物怖ものおじせず、そういう。


「え?なに?俺は「コーゼティブ=ハント」よろしく……じゃないか、さようなら。」『ファイアーバースト』―――――!」


「不意打ちかっ!なかなか小狡い手を使いよるのぅ……『速度上昇スピードアップ』―――――!『極限の破壊シンプルブレイク』―――――!」


「ドッ」と鈍い音が低く響く。


「ガハッ……ガァァッ」


 コーゼティブは口から、血を吐く。


「どうじゃ?なかなかに良いものだろう?拳で殴られるというのは」


 コーゼティブは苦笑いを浮かべる。


「ハッ。何言ってんだ。拳でみぞおち殴られるのが、いいわけないだろ」


 そして「どうかしてんじゃないのか?お前。」と付け足した。


 すると、目上の木から「ガサッ」と木々が揺れる音がする。


「ルナの友達さん!時間稼ぎありがとう!『狙撃スナイピング』―――――!」


 無数の矢が、コーゼティブに降り注ぐ。

 あんなにも、大量に弓を射っているのに、ベーゼルを見事に躱し、コーゼティブだけを狙っている。


「ハッ。俺は狩人ハンター使役者テイマーだぞ?まさか、タイガーウルフの群れを一瞬で倒しちまうことには驚いたが」


 コーゼティブは不敵に笑う。


「往々にして行け!『幻凶王虎げんきょうおうこ』―――――!馬鹿が!木の上から攻撃するのなら、木もろとも倒してしまえばいい!」


「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」

 エルフの人たちの声が聞こえる。


 そこには、見知った顔があった。

 息はしているものの、重傷だ。


 それに、クレイトは憤りを感じているようだった。

 それと同時に、何もできない自分に嘆いているようでもあった。


 クレイトにはできることがある。


 いまこそ、こいつの「一点集中ワンポイントフォーカス」の力を発揮するときだろう。


 俺はクレイトに、一丁の拳銃を放り投げる。


「それ使え。まあ、使えっつっても、弾は14発しか撃てねえし、なんちゃって拳銃だ。本物はサーガが今作っている途中だからな。だが、なんちゃってでも、しっかり使えるはずだ。お前の能力を見せてやれ!」


 俺がそう言うと。


「生意気な」


 と、クレイトが返す。

 いや、本当に生意気だね君。


 よくそんな返しができるね。


 ちょっとだけ、クレイトに俺が作った、なんちゃって拳銃を渡したことを後悔した。

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