第43話 大悪魔との闘い

 メイちゃんがクロスと合流しに行った直後。

 バルメントの身に異変が起きていた。


「メリッメリッ」という音を立て、皮膚が剥がれ落ちていく。

 あまりも悲惨なその状況に私は絶句した。


 すると、中から角が生え、背中には羽のある悪魔がそこに居た。


「ニヤッ」と悪魔は不敵に笑う。


 まるで、私たちを敵としてみなしていないような、余裕な態度で。


 黒のタキシードを着ており、そこからは上品さがうかがえる。


「ああ?お前らか?俺の着ぐるみを剥がしたのは」


 上品な見た目とは裏腹に、荒々しい声でそういう。


 それにしても着ぐるみ?バルメントのことだろうか。

 あの剥がれ落ち方は、身にまとっていたようなものか。


「ま。無能力者がここまで持ったんなら上出来ってところか。にしても、あいつの悪感情は最高だったな。憎しみに嫉妬。怒りに色欲。悪感情のオンパレードでフルコースだ」


 やはりこの悪魔がバルメントのところへ来たのは悪感情目当てか。


「まあいいか。お前ら、この俺の着ぐるみ剝がすくらいの力はあるんだろ?ちょいと遊んでやるよ。かかってきな」


 悪魔はそういうと、手をひょいひょいと動かし、私たちを挑発しているようだ。


 いつもの私なら、挑発に乗っているだろうけど、相手は大悪魔。

 なんせ十万年は生きているのだ。

 そんな相手に勝負を挑むのは無謀。


「いえ、遠慮しておきます」


 私は極めて冷静にそういう。


「ハッ。連れねぇなぁ。まあいい。無理やりその気にさせるだけだ『召喚龍サモン悪龍イービルドラゴン』―――――!!」


 黒いうろこと、雷のように光る鋭い眼。

 私の100倍はあるんじゃないかと思うぐらい、大きな巨体。


 まさか召喚龍サモンドラゴンを使えるとは、私の召喚獣の完全なる上位互換魔法なのに。

 流石大悪魔。


 で、悪龍イービルドラゴンってなんだろう?

 ドラゴン種の中では聞いたことがない。


「ハッハァ!聞いたことがない?当たり前だ!俺が即興で作ったドラゴンだからなあ!」


 即興でドラゴンを作るなんて、聞いたことがない。


 どうして!?

 大悪魔はそんなことが出来るの!?


 どうやら私は大悪魔を甘く見ていたようだ。

 これは、ベーゼルと協力しても、倒せるかどうかわからない強敵だ。


「仕方ない。ベーゼル闘うよ!」


「我もか……。まあ、当たり前か」


 いまにも「やれやれ……」と言いかねない様子のベーゼルだ。


 ごめんね。ベーゼル。

 封印が解けて動けるようになったばっかりなのに、こんな強敵と闘わされる羽目になって。


 私たちの戦う意思を感じたのか、大悪魔は一歩引き、とりあえずは悪龍イービルドラゴンで様子見。といったところだろうか。


 私とベーゼルと悪龍イービルドラゴンの闘いの火蓋ひぶたが今切って落とされた。

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