第60話 王の力

「ルナさん。ありがとう。サルジニルグに国民を移動させるように仕向けるよ。『国民統治ピープルルーザー』―――――」


 すると、ルナは何かを思い出したように、手を叩く。


「あっ。ちょっと待ってください。来てください……。と言っておいてあれなんですけど、まだサルジニルグが人を受け入れる準備ができていなくて、クレイトくん曰く、5年は猶予があるようなので、それまで、しばらく待っては頂けないでしょうか?」


 そういうと、カインドは驚きつつも、微笑む。


「わかった。そうすることにするよ『キャンセル』―――――――」


 ん?なんかキャンセルのイントネーションがおかしいな。


 ルナのは「キャ→ン↓セル」なのに、カインドのは「キャ↑ンセル↓」だ。

 なんか、なまってるような感じ。


 普段は感じないのになぁ……。

 魔法に訛りが出る世界なのかなぁ……。


 それはそうとルナ。お前よく受け入れる準備ができていないのにそんなこと言えたな!


 俺もうびっくりだよ……。


 おとなしくしとけばよかったんじゃないの?


 もう!全くこの子ったら!

 とかいったら、気持ち悪いだろうか。


 あ。気持ち悪いですかそうですか。すみません。



 じゃあ、このことは口にしないってことでここはどうか、丸く収めていただけると……。


 って、こんなことを内心でいってどうするんだろうな。


 まあ、俺が楽しけりゃいいか。


「でも、幸せならオッケーです。」って言ってたしな。


 よかった。許された。


 違う!俺はやってない!違うんだぁぁぁ。ってならなくてよかった。


 ちなみに今のは、痴漢冤罪で捕まった人のまね。


 あ。不謹慎ですか。わかりました。控えま……じゃなくてやめますんで、どうか許してください。あ。そうですかありがとうございます。


 ふぃ~。何とか許された。よかったよかった。


 このままだと俺が、裁判所行って、地方の判決に満足がいかなくて、東京地裁まで言っているところだった。


 危なかった。


 まあ、もしかしたら「地方の判決に満足が行くかもしれないだろ」っていうツッコミは待っていないのであしからず。


 ……というか、こんなに内心でしゃべっているのなんかちょっと虚しいな。


 それにしても、ルナもベーゼルもメイさんもクレイトもカインドも何か考えているのか、ただ沈黙のみがそこにある。


 本当に「チッチッチッポーン」が一番の合う状況だ。


 まあ、完全に部外者で他人事の俺でも何か考えてるもんね。

 そりゃあ当事者はもっと何か考えるよね。


 もっとも、俺が考えてることはクソの役にも立たないことだけどね。



「では、また移民を受け入れる準備ができたらここに伺います。」


 すると沈黙を打ち破る声が、後方から聞こえる。その声主はルナだった。


「そうか、わかった。」


 そういい。カインドは優しく微笑む。

 いや、あんたどれだけ微笑むの!?


 ずっと笑ってんじゃん。何か楽しいことでもあったのだろうか。


 王って大変だろ?そんな中で、仕事に楽しさでも見出しているのか?

 もしそうだとしたら、尊敬のあまり「カインド教」とか作っちゃうかもしれない。


 だって、仕事基本楽しくないもんね。

 仕事が楽しいってどういうことだよって感じだもんね。


 まじ尊敬。カインドさん。まじ、ぱねぇ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る