第25話 素手で石は叩き割れない

「なあ、粉々にしたらいいんだよな。別の素手で叩き割る必要はないんだよな」


「む。まあそうだが。粉々にすることで、個々の封印の力を弱めれたらそれでいいからな」


「じゃあいい」


 俺は右手を石に手をかざすと、


「『万物製造ポゼッションメイキング』――――」


 そう唱えると石が粉々に砕け散る。


 今回は一瞬だったのでそんなに疲れていない。


「む。なんだ?その奇妙な技は。まあ良い。これで長い封印生活からおさらばだ」


「ちなみに長い封印ってどのくらい……」


「ん?気になるのか?まあ、ざっと7000年くらいか」


 長っ!いや、いくらなんでも長すぎるだろ……。


「『解除キャンセル』―――!」


 邪神がそう唱えると「ピキ……パキ……。」と何かが割れる音がする。


「ふう……」


 そう邪神は息を吐くと、姿を現す。


 一言で表すなら、それはすごい美女だった。


 黒髪に紺鼠こんねずの目。片目は塗れ絹のような黒髪に隠されている。


 頭部には巻角まきづののようなものがついており、胸元が広々と開いている藍色の洋服に、紺青こんじょうの帯、黒のスカート。


 それは、誰が見ても「美人」というような姿だった。


 というか、この邪神って女性だったんだね。知らなかった。


「貴様。名は何という?」


「俺は、な…クロス=シャーロットだ」


 あっぶねぇ中山翔琉なかやまかけるって言ってしまうところだった。


「クロスか。われは「ベーゼル」邪神ベーゼルだ」


 ベーゼルか。


「もう、ここにも人がいなくなったな。昔は賑わっていたんだがなぁ……」


 ベーゼルは物悲しそうにそういった。


「クロス。少しさせてもらっても良いか?」


「見る?まあいいけど」


「視るぞ。『読描リードリーディング』」


 ベーゼルがそう唱える。

 なんかすごそう(小並感)


「おお、お主ルナと知り合いか。なら話は早い。ルナに伝えて欲しいことが……。いや、我が行く。クロス。方角はどっちだ」


 話が進むののが早いなあ。


「北だ」


「そうか」ベーゼルはそう言うと、俺の腹に手を伸ばし……。


「ブオッ」と音と共に、足が浮く感覚がする。

 腹のあたりに重力が感じる。


「あれ?浮いてる?」


 そう言った瞬間には、高度は十分に上がっており、怖いと感じるほどにはlぷ度は上がっていた。


 ちなみに抱えられているだけで、えらく不安定だ。


 ジェットコースターよりも全然怖い。


「『速度上昇スピードアップ』――」


 ベーゼルがそう唱える。

 すると、肌で感じたことのない風を強烈に感じる。


 いや、強烈というよりは、痛いかもしれない。


 飛行機から顔を出している気分だ。

 ……出したことないけど。


 というか、本当にどうかしてる。痛いぐらいの風ってどんなだよ。


 もう少し、速度緩めてくれませんかね……。


 俺のそんな思いは届くはずもなく、速度は上がるばかり……。


 いや、上がるばかりってなんだよ。

速度上昇スピードアップ」ってベーゼルが唱えた瞬間から、もう痛いんだよ。


 飛ぶにしても、ゆっくり飛んでくれ~!!!!

 という俺の悲痛な心の叫びはベーゼルには届かず、速度は上がり続けるのだった。

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