ゆうしゃ様とまおう様~勇者と魔王の再国譚~
団栗珈琲。
第一章 魔王と勇者とサルジニルグと
第1話 俺、死す
「疲れたぁ…。」
そう俺は一人きりのオフィスで声を上げる。大量に積まれていた仕事の山をなんとか潰し、帰り支度を始める。
ふと、時計を見ると時刻は深夜二時を回っていた。
土曜日のこんな時間まで残業させるなんて、頭ん中清々しいほどブラックだな。
休日出勤は当たり前、
休日ってな~んだ?もうね休日という概念にさえ口出してしまうこの状況を何とかしてほしい。
というか、休日でも会社寝泊まりコースです。
なんなら家に帰れたがためしがない。……どういうことだよ。
いや、本当にどういうことだよ。どういうことだよ!
残業はもちろんするのだが、残業代なんて出ない。サビ残です。
だれだよサービス残業とかいう悪魔のルール決めたやつ。
ちなみに、有給なんて名前の給料がもらえて、
本当に一生のお願いなので労基さんはやくここを見つけてください。
まあでもこの会社は労基とズブズブにつながってるらしいからなぁ……。
もう労基は諦めるとして、明日のプレゼンで使う資料が鞄の中に入っていない。
しばらく辺りを見渡し、探していると見覚えのある紙が目に入る。
間違いない。明日の会議で使う資料だ。
明日の会議も眠気と闘いながら、話を聞くんだよな…。今回もレッドプルさんのお世話になること間違いなしだな。いつも本当にありがとうございます。
立ち上がろうとすると、ドサッと間抜けな音が鳴る。
なに?重労働が
いやだなぁ……。
資料を手にした俺は会社の電気を消し、さっさと出ようとしていていると一箇所だけ、光りが灯っている。が、その光は蛍光灯の光ではなく、もっと神聖な何かのようだ。
え?なに?天使のお迎えですか?俺、過労死で死ぬんですか?
よく目を凝らしてみると、黒いローブを
天使の輪っかは…ついていない。
天使じゃないのか、輪っかのついていない天使なのか。どっちだろうか。
俺はその少女に近づく、その少女は
小さな顔に、ぶっきらぼうに伸ばした長い髪が茜の目と合わさって、よく映える。
その少女は俺を指差し、口を開く。
「………」
口は開くが何も言わない。というか目が泳いでいる。なんだか本当に言ってもよいものか、言葉を選んでるように見える。
なに?ウケてると思ってオタクぶってたら。ある日「正直キモイよ」って言ったクラスの女子と同じ顔をしているんだけど。
俺が耳を塞さぎたくなるようなことなら聞きたくないんだけど。
「……えっと。……あなたは死にます」
うん。聞きたくなかった。
死ぬってどういうこと?
息絶えるってこと?
過労死?
俺まだ死にたくないんだけど。
やり残したこともたくさんあるし。あの気になってた漫画が完結したとか、あと、ここの会社の寮から自殺者が出たとか、あと好きだったな労も読み終えてないし。
やばい。途中のここの会社の寮から自殺者が出た。が気になりすぎる。
同僚から聞いた話だけど。
なんで会社から自殺者なんて出るんだよ……。
そうだね。。ブラックなせいだね。
本当にどうにかならないかなぁ……。
というか、まだ全然やり残したことあるんだけど……。
まあでも、死んでこの会社からおさらばできるなら、クソなろうなんかくれてやる。
ばいばい今世。
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