第19話 魔力回復と追手

 ルナいわく、一気にサルジニルグまで転移テレポートするには、膨大な魔力が必要で、少し体力、魔力回復の時間感を与えてほしい……らしい。


 メイさんの見抜シースルーによって、ここはパミーフクスとオリエンルの国境付近の「パオミリざん」ということが判明した。


 位置的にはパミーフクス。


「王家近衛監視隊」と「王家武力戦闘隊」の二つに隊が分かれおり、合計で数千人程度、恐らくこの山まで王家武力戦闘隊が来ているとのこと。


 つまり、この山から出られないということだ。


 どうしたものかと考えていると、ピーッ、ピッピッピッピッピとあからさまな機械音が流れてくる。


「まずいですね」


 何がまずいのだろうか。


「これは軍事用通信魔法ミリタリーユースコミュニケーションマジックの通信音です」


「つまり……」


「敵に勘付かれたということですね」


 本当にまずい状況じゃねえか。


 どうしよう♪あそれ、どうしよう♪

 と、もう踊るしかねえ!状態になっていた俺の首筋がはたかれる。


 クレイトだった。


 こんな小さい奴に叩かれちゃった!


 まあ、俺が取り乱していたし助かったけどね。


「いくぞ」


「わかった」


 こいつが王子だったとしてもとてもじゃないが敬語は使えないな。


 あ~ばよ。とっつぁ~んこんな山からはおさらばさせてもらうぜぇ~


 と、逃げられないにも関わらず、そんなことを考えてフラグが立ったのか知らないが。



「みつけたぞ!あいつだ!王子をさらったのは!」


 みつかっちゃった。


「各自。撃てぇぇ!!!!!」


 やばい、やばい、やばい、やばい、やばい。


 パン!パン!パン!といった発砲音が絶え間なく聞こえる。



「アーッハッハッハッハ!いい気分だ!なあ兄上!いや、兄上なんて敬称、貴様には相応しくないな!」



 そう高らかな笑い声が聞こえる。

 見下すような内容。


「あの声……」


 メイさんが憎そうにそういう。


「バルメントか……。」


 クレイトが呟く。

 見知った顔のように。


 誰?


 ……まあ、兄上って言ってたしね、大体わかるけどね。


「ハッハッハッハ!死ね!無能力者が!息絶えろ!死ね!死ね!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 うーわっ。笑い方キッショ……。


 何かよくない薬キめてるんじゃないの?



 そうすると、なぜだか見ているだけで腹が立ってきて、殴りたくなる男が現れる。

 おっ、俺の中の殺戮衝動があふれてきたのかっ……!


「何しに来た、バルメント」


 クレイトは毒づいた声でそう言う。


「貴様を笑いものにしに来た」


 バルメントはえらく楽しそうにそういう。


「それだけか?」


 それとは対照的に、クレイトは冷静に聞き返す。


「そんなわけなかろう。貴様を殺しに来た!殺してやる!この手で!」


 何言ってるんだこいつ。俺がそう思った刹那……。


「オラァッ!」

 そのドスの利いた声とともに「ドッ」と鈍い音がなる。


 気が付くとバルメントは吹っ飛ばされていた。


 ほかでもない、メイさんの拳で。


「ぶちのめすぞ!このクソゴミ!これ以上口を開こうってんなら、無理やり、二度そのきったねえ口開けないようにしてやろうか?あ?」


 え?あれメイさん?本当に?


 怖すぎるんだけど?

 え?

 さっきまでの優しい面影がまったくない。 


 893かと勘違いするぐらいには怖いです。


 一瞬チビるかと思いました。


 ……本当に怖いです。

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