第14話 死闘の末に待つものは……

「ぶっ殺すぞぉぉぉぉ!!!!!!」そう叫びながら、俺は砂の剣(自家製)を手にし、男の方へと向かう。


「ふっ。よっぽど死にたいらしい」


 エネミルの意識が俺に向く。


「クロス。ありがとう」


 ルナは左手を突き出し……。


「『デスフレア』―――――!!!!!!」


 そう叫ぶ。

 すると、紅蓮の業火がバルメントとルナを囲う。


「まさか、こんなにも早く魔力回復がっ……。クソぉぉぉ!!!!!!。油断したぁぁぁ!!!!!!僕は死なんぞぉ!お前らの心の中で一緒生きてやる!そして呪ってやるぅぅ!!!!!!」


 エネミルの悲痛な叫び声が聞こえる中、ルナだけが業火の中から出てくる。


「私を敵に回すことは、こういう事だよ」


 ルナは冷徹な声つきで言う。

 まるで、魔王を見ているような気分だった


 まあ、こいつ魔王なんだけどね。


 それでも、魔王だと再確認させる迫力が彼女にはあった。



 業火が収まったころには骨も残っておらず、ただバルメントであっただろうちりだけが残されていた。


 ただこいつも、国の命令を受けて戦っただけだというのに、死ぬ。



 あちらも、本気で俺たちを殺そうとしていた。


 相手が本気だったからこそ、俺たちは殺すという選択をとったのだ。

 いや、取らざるを得なかった。


 だか、そんなものは言い訳だろう。


 彼の敗因はきっとおごりだろう。


 あんな話をせず、さっさとルナを殺しておけば俺は戦意喪失したかもしれない。


 だが、そんなこと言ったって起きてしまったことは変わらないし、死んだ人も生き返らない。


 きっとあいつにも、家族がいて、死を悲しむ人もいて、そんな中、ルナは、俺たちは彼を殺した。


 きっとそれは仕方のない行動で、きっと正義は俺たちにあるだろう。


 だが、エネミル=ウォードという一人の男の人生を終わらせた。いくら俺たちに正義あったとしてもその結果は覆らない。


 そして、正義なんて立場や場所によって変わる曖昧あいまいなものだ。


 殺したからには俺たちも殺されたとしても文句は言えない。


 それが人の命を終わらせたものへの罰なのだから。




 後ろを振り返ると、「エネミル=ウォード」と書かれた墓が立っている。


 これが、俺が彼にできる、せめもてものの贖罪しょくざいであり罪滅ぼしなのだ。

 なんの贖罪にも罪滅ぼしにもなっていないかもしれないが。

 

 贖罪を罪滅ぼしをしたと俺が思いたい。だから、墓を作ったのだろう。


 企業と国という違いはあれど、上からの命令で死んだものとしての、共感……でもあったのだろうか。


 いや、違う。

 それはただの自己満足で彼のために何かをした。

 と、俺がそう思いたかっただけなのだろう。


 それは、俺に対しての欺瞞だろう。

 だが、あざむくしかない。自分自身をそうでもしないと、人を殺したクズだという自責じせきの念から逃げたいだけなのだ。


 俺が実際に彼を殺したわけではないが、間接的に殺した。

 だから俺も人殺しだ。





 空を見上げる。


 青い空はれとしていている。


 きっと何が起こっても、この空はずっと青いままだろう。


 誰が死んでも。


 誰が泣いても。


 誰が人を殺しても。


 変わらないものはある。

 この空のように。

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