第17話 オリエンルという国

 東京都心のように高層ビルが立ち並んでいるわけでも、近未来的なデザインの建物があるわけでもない。


 だがそこは発展している。

 言ってしまえば人の流れが盛んなのだ。


 大規模な祭りでもやっているのだろうか。


 ブラットしろまえどおりは屋台が数多く立ち並んでいる。



 するとルナが声を上げる。


「あっ!ホニョフラッペが売ってる!」


 なに?ホニョフラッペって。

 フラッペはわかるけどホニョってなんだ。

 ハムが好きな顔のついた魚か?


「お、嬢ちゃん目の付け所がいいね」


 屋台の店主であろうおっちゃんが話しかけてくる。


「でも、ホニョって乱獲で絶滅したはずですよね」


「そうなんだよ、でもな最近のホニョの再生に成功したんだよ」


 ホニョってなんだ?


「ははっ。まあ絶滅したのもだいぶ前の話だからな、知らない奴がいてもしょうがないな」


 気になりすぎて、声に出てたらしい。


「ホニョってのはな甘味料の一種なんだ。昔は森を歩いていたら、何匹もホニョを見たもんさ。駄菓子屋がホニョを一匹10ZRで買ってくれたからなあ。友達と一緒に森に行って来ずかい稼ぎをしたなあ……」


 おっちゃんは懐かしむようにそう言う。


 ZRってなんだ?金の単位か?


「ということで嬢ちゃん。買っていかないかい?」

「買います」


 ルナは即答してた。

 お前金ないんじゃなかったのかよ。


「はい400ZRね」


 ルナはポケットから鈍く光る銅貨を取り出す。

 銅貨を四枚おっちゃんに手渡す。


「はい。まいどあり~」


 おっちゃんがそう言い、ホニョフラッペの入ったコップをルナに手渡す。



 おっちゃんの屋台から少し離れたベンチでルナはホニョフラッペを飲んでいる。


「美味しい~」


 ルナはそう笑顔で言う。


「王子ィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


 すると、そんななごやかな雰囲気をぶち壊す、緊迫した大声が響き渡る。

 何かあったのかな?と思っていると……。


「おい」

 と、後ろから声を掛けられる。


「!!。うわっ。びっくりしたぁ……」


 そこには、深縹こきはなだ色の目に、銀色の髪。そして、やたらと高そうな服を偉い王子が着るような、宝石でもついてんじゃねえか、と思うくらい煌びやかな服を纏った少年がいる。


「おい。愚民」


 お?なんだこの野郎。やんのか?あ?


 俺も流石に少年相手にそんなムキにはならない。

 ……いや、なっていたかもしれない。


「すみません」


 少年のあまりにも大きいインパクトのせいで気付かなかったが、もう一人いる。


 深緑の髪が背中まで届く長いポニーテールが揺れ、森林を彷彿ほうふつとさせる若竹色の目、そして如何いかにもな丈の長い、メイド服に身を包んでいる。


 …………あと、胸が大きい。


 そのメイドらしき人が口を開く。


「あなた方はここの国の人ではないですよね」


 なんだその質問。


「え?はい」


「本当に勝手なお願いで申し訳ないのですが……」


 何だか歯切れが悪い。


「私たちをかくまってはいただけませんか?」

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