第17話 絶望的

 罪悪感と羞恥で俺だけが精神ダメージを受けたあと、気を取り直して泳ぐことに。

 廉と漣先輩は深いプールへ行き、俺は赤崎と共に俺の腰より少し深いぐらいのプールへ来ていた。


「ここなら足ついても問題ないし、とりあえず適当に泳いでみてくれ」

「は、はい……!」


 赤崎の言う泳げないというのがどのレベルかを確かめるべく、一旦泳いでみてもらうことにした。


「いきます! ぶくぶくぶく……」

「あっ、これは……」


 結論、想像以上にダメでした。

 足を上げた瞬間にジタバタともがき始め、全く進むことなく沈んでいく。

 ヤバい、絶望的すぎる。水の抵抗がどうとかそういう次元じゃない。

 俺は急いで赤崎を拾い上げ、再び立たせた。


「ぷはっ、危うく死ぬところでした……」

「うーん、これ無理じゃない?」


 開始から間もないが、既に赤崎が泳げるようになるビジョンが想像できなくなっていた。

 少なくとも凡人レベルの俺がどうこうできるものではない気がする。


「やっぱり駄目ですかね……」

「あー、とりあえずやってみるか」


 俺の言葉を受け落ち込んでしまう赤崎。

 折角遊びに来たのに嫌な思い出にはしたくない……もう少し粘ってみるか。


「じゃあとりあえず俺の手を持て。そんで引っ張るから動かずに浮いててくれ」

「は、はい!」


 俺の手を握る赤崎。

 手小さいな……そもそも小柄だしこんなものなのかもしれないが。


「じゃ、進むぞ」


 赤崎が頷いたのを確認し、ゆっくりと後ろ歩きをはじめる。

 今度は暴れて沈むこともなく、ぷかぷかと浮かんでいる。


 そのまましばらく進んでから、再び立たせる。


「浮かぶ感覚は掴めたか?」

「うーん、おそらく……?」


 赤崎は首を傾げながらうんうん唸っている。

 まああのレベルから一発で感覚掴めってのも酷か。


 それからもしばらく同じように俺が手を引いて浮かぶのを繰り返した。

 そろそろ次に進んでもいいかもな。


「じゃ、俺途中で手を離すから。しばらく浮いといてくれ」

「は、はい!」


 次は俺の補助なしで浮けるようにしたい。

 先程までと同じ要領で進みはじめ、しばらくしてから手を離す。


「あっ、せんぱっ、ごぼ、ぶくぶく……」

「まだダメかぁ……」


 しかし、俺が手を離したことで焦ったのか最初と同じように沈んでしまった。

 沈んでいく赤崎を再び持ち上げる。


「はぁ、はぁ……」


 二度も沈んだせいか、赤崎は肩で息をしている。

 呼吸に合わせて大きなおっぱいが動く。

 揉みたいけど揉めない……なんか俺もキツくなってきたな。主におっぱいが原因で。


「……とりあえず休憩しようか」

「はい……」


 全くできなかったものを一気に覚えさせるのは流石に厳しい。

 俺たちはプールから上がり、一旦休憩をとることに。


 屋根付きの休憩所に行くと、廉が待ち構えていた。


「よお二人とも、調子はどうよ?」

「うーん、厳しい」

「難しいです……」

「まあ最初は大変だよなぁ……あ、これ二人にやるよ」


 廉はそう言うと、ジュースを二本差し出してくる。

 こういう気遣いができるあたり、いいヤツではあるんだよな……煽りが絶望的にウザいけど。


「漣先輩は?」


 俺が聞くと、廉は深いプールのある方を指さす。

 見れば、猛スピードで泳ぎ続ける漣先輩の姿が目に入った。


「マジでなんでもできるなあの人」

「蒼依さん、すごいなぁ」


 やはりスペックは圧倒的である。

 天が何物も与えているとしか思えない。


「やっぱ漣先輩に教えてもらった方がいいかもな……あとで頼もう」

「あ、あの……私は、その……先輩がいい、です」

「そ、そうか? わかった、じゃあ俺がやるよ」


 俺の腕にしがみつき、不安げに見上げる赤崎。

 実力の高い漣先輩に頼んだ方が上達するのではないかと思ったのだが、赤崎は俺がいいらしい。

 上手くやれる自信はあまりないが、可愛い後輩からそこまで慕われているのだと思えば悪い気はしない。


 俺は腕に当たるおっぱいの感触を堪能しつつ、ジュースを飲み干した。


「お熱いねぇ、先輩サンよぉ」

「……うるせえ」


 そして、廉の煽りはやっぱりウザかった。

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