第27話 ファミレス再び
週末になり、俺は当初の予定通り赤崎とご飯を食べに来ていた。
場所はまたもや例のファミレス。
残念ながら俺たちの外食レパートリーは増えていなかった。
「で、もうファミレスにはツッコまないけどなんで隣? しかも狭いし」
「いいじゃないですか! なんだか寂しかったから先輩パワーを補給しているのです!」
何故か向かい側ではなく隣に座った赤崎。
しかもめちゃくちゃ詰めてくるので狭いし暑い。
あとおっぱいが腕に当たっているので使える思考のリソースも狭い。
「他のお客さん見てるぞ」
「い、いいんですぅ! 周りの目なんて気にしなくて!」
「いや、めっちゃ顔赤いけど」
周囲の人々による生暖かい視線を頂戴しまくっている事を指摘してやると、途端に茹で上がったタコのように赤くなった。
しかしそれでも何故か離れずに粘っており、大きなおっぱい越しにも鼓動が伝わってきている。
冷静に指摘している感を出しているが、実のところ俺も超恥ずかしい。
恥ずかしさよりおっぱいの感触に意識を集中することで相殺しているだけである。
ああ、柔らかくて最高……でもやっぱ暑いな。
「なあ、そろそろ暑いんだけど」
「もうちょっと、あと五分お願いします!」
いや長いよ……夏が終わったとはいえまだ全然暑いぞ?
マジで急にどうしたんだろうか。
結局料理が届くまで、赤崎は俺に密着していた。
「うぅ、ごめんなさい」
「別にいいけど……」
食べ終わったあと、ようやく正気に戻ったらしい赤崎は、恥ずかしそうに謝罪してきた。
普通に暑かったし恥ずかしかったが、赤崎に懐かれているというのは嬉しいことなのでそこまで気にしていない。
「なんか嫌なことでもあったのか?」
「あ、いや……大したことじゃないんです」
突然おかしくなるようなことがあったのかと気になって聞いてみたものの、話してくれそうにない。
まあ俺も全然話してないから人の事言えないんだけども。
「俺が言っても説得力に欠けるかもしれないけど、なんでも相談してくれていいからな?」
「はい、そう言ってもらえて嬉しいです……」
心配になって聞いてみるけど話してもらえず、なんでも相談してくれなんて言ってみたり。
なんかいつもの逆パターンみたいだな、これ。
魔法少女関連だったら俺に話せるわけないから意味ないけど。
それからしばらく雑談をして、店を出る。
「今日はありがとうございました! また行きましょうね」
「おう、そうだな」
途中までは同じ道なので、横に並んで一緒に歩く。
毎度のごとく同じようなことをしているだけだが、それもまたいいものである。
自分が普通じゃないからこそ、普通のことをする喜びがより強く感じられるような気がした。
「いやぁ、おいしかったです」
「うーん、でも赤崎が作った方がうまいとおもうぞ?」
「そ、そんなこと……ありますか?」
「俺はそう思ってるけど」
もはや食べすぎて俺の好みが寄ってるだけかもしれないが、個人的には外食より赤崎が作る方がうまいと思っている。
「えへへ、嬉しいです」
赤崎が喜ぶ姿までセットだから尚のことお得だ。
もちろん今日みたいにゆっくりするのもいいが。
「先輩、もうちょっとだけ先輩パワーください」
「……仕方ねえやつだな」
また訳の分からないことを言いながら、赤崎が俺に密着してくる。
多少歩きづらくはあるが、嫌な気はしない。
てか揉みたい。押しつけられるだけじゃなくて俺の手で。
……いや、何考えてんだか。
馬鹿みたいな思考を振り払いながら、ゆっくりと歩く。
「さて、ここまでか。じゃあまたな、気をつけて」
「はい、先輩も気をつけて」
しばらく歩いてから、それぞれの方向へ別れた。
まだ遅い時間じゃないし、わざわざ送るほどの距離でもない。
それにしても、今日は怪人側の思考に引っ張られることも最近にしては少なく、比較的穏やかな時間を過ごすことができた。
……赤崎に胸を押しつけられて満足していただけなのではないかという疑問は残るが。
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