第30話 過ぎ去った脅威
あれから数日経ったが、怪人は一度も出現していなかった。
白衣の怪人の言う通り、奴が大量発生の原因であったらしい。
怪人が出ないことでおっぱいが揉めないところまで奴の言う通りだったのは少し腹が立つが。
体育祭はあのまま中止となり、学校では怪人へのヘイトが高まっていた。
怪人になるようなやつは性根が腐っているとか、怪人になった奴には人権がないだとか。
あの時誰が怪人化したのかが公表されないのをいい事に、皆好き放題に言っている。
「……帰りてえ」
今も現在進行形で怪人をやっている俺、非常に耳が痛い。
無自覚の悪口を言われ続けるし、おっぱいは揉めてないし、最近は散々だ。
あの戦いの後、結局俺は揉まなかった。
人間として助けになりたいという思いで動いたはずなのに、それに反するのはどうなのかと思ったのだ。
蔓延する悪口に関しては、怪人がクソ野郎だってのには賛成だけどな。
どいつもこいつもくだらねえ欲望で周囲に迷惑をかけるクズばかり。
俺だって適当な理由をつけて無理矢理正当化しているだけと言われれば、それは否定できない。
周囲の声と止まらない衝動で自己嫌悪を加速させながら、時間が過ぎていく。
気づいた頃には、既に昼休みになっていた。
「先輩、なんだか元気なさそうですけど……大丈夫ですか?」
「……ん? ああ、大丈夫」
屋上のベンチでぼーっとしていると、赤崎が心配そうに声をかけてきた。
視線がおっぱいに行きそうになるのを必死で抑える。
「ま、ちょっと疲れたってだけだ」
「そうですか……本当にキツかったら、ちゃんと休まないと駄目ですよ?」
「大丈夫、わかってるよ」
尚も心配そうにこちらを覗き込んでくる赤崎に対し、頭を軽くポンポンとしながら返す。
あと、姿勢の影響で胸の膨らみがよく見える。絶景かな。
「そういえば、最近はあんまり忙しくないんだってな」
「はい、ようやく落ち着けます」
「しばらくずっと頑張ってたもんな」
「はい……!」
あんまり心配させるのもよくないので、話題を切り替える。
怪人の大量発生も落ち着き、ようやく楽になったことだろう。
赤崎は嬉しそうに目を細めている。
「先輩が支えてくれたおかげですよ」
「特に何もしてないけどな」
本当に、俺は何もしてやれていない。
ただ、ずっと騙し続けているだけだ。
それなのに、赤崎はこうやって俺に感謝してくる。
自嘲するように、ため息を漏らす。
「先輩にはいっぱい助けてもらったので、今度は私の番です! 元気のない先輩に、後輩パワーをあげちゃいます!」
「……俺はそのよくわからんパワーの存在を今知ったぞ」
それを見て突然訳の分からないことを言い始めた赤崎は、ファミレスの時と同じように密着してきた。
腕に当たる柔らかな感触が、俺の心を少しだけ満たしてくれるような気がする。
でも欲を言うなら揉みたい。
……なんかこれだと後輩パワーじゃなくておっぱいパワーだな。
「どうです? 私のパワー、伝わってますか?」
「まあ、多分……?」
「むむ、どうやら足りてませんね……んんーっ、これでどうですか?」
俺の返事がお気に召さなかったようで、腕に抱きついたまま頬ずりをし始めた。
小柄なのも相まって、小動物的な可愛らしさを感じる。
少なくとも、好きな女の子からここまでされて嫌な気はしない。
……多分後輩パワー感じました、知らんけど。
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