第24話 生徒会長、襲来!

 俺と赤崎がいつものように雑談をしていると、屋上の扉が開く音が聞こえた。

 珍しいこともあるもんだなぁ等と考えつつ視線を向けると、そこに居たのは漣先輩であった。


「ふむ、いつもここにいると聞いていたが本当みたいだな!」

「漣先輩? どうしたんですか?」

「ああ、実は二人に相談したいことがあってな」


 俺たちに相談?

 一体どんな相談なのかと考えてみるが、それらしき答えはわからない。


「蒼依さん、ちなみに内容の方は……?」

「ズバリ、恋愛相談だッ!!」

「「恋愛相談!?」」


 赤崎の質問に対して漣先輩から返ってきたのは衝撃の答えだった。

 よりによって俺たちに?

 諸事情により最後まで踏み込めない俺に?

 まあそんな事情知らないだろうから仕方ないんだけども。


「私の知り合いで付き合ってそうなのはお前たちぐらいなんだ、頼む!!」

「わ、わた、私たち、つつ付き合ってないですよ!?」

「そ、そうですよ漣先輩!」

「……へ?」


 全力で頭を下げる漣先輩に必死で弁明すると、こっちを向いて間抜けな顔になった。

 すげえ、人の顔ってここまで間抜けに見えることあるんだ……。


「そ、それでもだ! 他にそれっぽい奴はいない!」

「まあ聞くだけならいいですけど……」

「そ、そうですね……」

「本当か!」


 俺たちが困惑しながらも了解の意を示すと、途端に表情を明るくした漣先輩。

 正直力になれる気は全くしないが、一応聞くだけ聞いてみることに。


「ちなみに、どんな人なんですか?」

「それが、わからないんだ……」

「「え?」」


 俺たちの声がハモる。

 好きな人がどんな人かわからないってどういうことだ?

 困惑を深める俺たちに、漣先輩は説明を重ねる。


「その人は私のことを二度も助けてくれたんだが……仮面をつけていてな」


 ……ん?

 漣先輩を二度助けてて仮面つけてる奴、なんか心当たりあるな……。

 赤崎の方を見ると、なんとも言えない表情のまま固まっていた。

 多分心当たりあるだろうからな、いつも胸揉んでくる変態に。


「しかし私は何としてもまたその人に会いたいんだ!」

「それ、俺たちに言ってもどうしようもないのでは……?」


 いや、実際のところ俺が行くだけで解決する。

 でもこの人の恋愛観どうなってんだ? 俺普通におっぱい揉んで帰ったけど。


「実はあの後もわざと危なくなってみたりしているんだが……会えていないんだ」

「蒼依さん……それはやめましょう」

「あ、ああ……わかった」


 えーっと、アホの方?

 いやアホでしたそういえば。

 よもや俺が行っていないときにそんなことをしていたとは。

 赤崎も呆れ半分で指摘している。


「これまでの二回は完全に偶然なんですよね?」

「ああ、きっと運命なんだこれは」

「だったらきっとそのうちまた会えますよ」


 普通の人間として言えること言ったらなんか適当になってしまった。

 漣先輩はコクコクと頷いているので大丈夫そうだけど。


「よし、ひとまずは運命を信じて待つぞ! また今度相談しに来る」

「あー、はい……」

「上手くいくといいですね……」


 漣先輩は決意を固めたように立ち上がると、そのまま屋上から出ていった。

 ……もう来られても言えることないよ?

 俺たちは二人、困ったように顔を見合わせた。


 漣先輩が嵐のように去っていったあと、赤崎がおもむろに口を開く。


「先輩……私たちが恋人同士だ、みたいな噂のこと知ってますか?」

「ああ、うん。知ってるぞ」

「せ、先輩はその噂についてどう思います……?」


 噂なぁ、別にずっと屋上にいる分には実害ないんだよな。

 強いて言うなら廉がウザいくらいのものだが……あいつは噂が広がる前からウザかったので諦めている。


「放っておけばいいんじゃねえか? 今のところ何もされてないし」

「私と恋人だって思われるの、嫌じゃないですか?」

「別に嫌じゃねえよ?」


 噂になっているということは、俺と赤崎が一緒にいても勝手に納得してくれるということだ。

 むしろ都合いいんじゃないかとすら思っている。


「そ、そうですか……!」

「赤崎は嫌じゃないのか?」

「嫌じゃないといいますか、むしろ、その……嬉しいといいますか……」


 同じ質問を返すと、顔を赤らめモジモジとしつつ答える赤崎。

 普通に考えて脈アリにしか見えない。


 ああ、抱きしめたい。

 抱きしめて愛とおっぱいを感じたい。


「ま、そういうわけだから。今まで通りいこうぜ」

「はい……!」


 しかし、俺は普通ではない。

 湧き上がる衝動を必死で抑えつつ、平静を装って答えることしかできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る