第16話 見惚れてた
「うえぇ……あっちぃなぁ」
「暑いなら離れろよ……」
天気は雲ひとつない快晴。
真夏の熱気にやられた様子の廉が、俺の肩に腕を回し体重をかけてくる。
「でも、いい天気になって良かったですね。プール日和です!」
赤崎はよほど楽しみにしていたようで、普段よりもテンションが上がっている様子。
俺たちは結局、プールに行くことになった。
海水浴場までは結構距離があり、高校生の俺たちでは移動手段も多くないからだ。
あと、魔法少女的にはあまり街から離れたくないのだろう。
「この前のキャンプぶりですね、漣先輩」
「ああ、まさかこの短期間で二度も会うことになるとはな」
赤崎が誘ったのは漣先輩だった。
誰を誘うかと思えばまさかの魔法少女繋がりである。
なんだかんだで全員面識のあるメンバーになり、俺は内心ほっとしていた。
「姉ちゃんも誘ってみたんだけどなぁ、忙しくて行けないってよ」
「陽葵のやつ、泳げないのが恥ずかしいだけだな」
陽葵さん、泳げないのか。
浮力かなりありそうだけど……あ、抵抗が大きいんだなさては。
「はいっ、私も泳げません!」
「なんで自信満々なんだよ……」
赤崎が手を上げ、自信満々に泳げない宣言をする。
やはり水の抵抗か……。
というかなんで泳げないのにこんなに行きたがってるんだ……?
「赤崎ちゃん、泳げないならダッキーに教えてもらっちゃうのはどうよ?」
「いいですね! というわけでお願いします!」
「まあいいけど……」
ニヤニヤしながら提案する廉とノリノリの赤崎。
一応人並み程度には泳げるので教えるのは問題ない。
間違いなく俺より漣先輩の方が泳ぎは上手いと思うが……なんというか、教えるのは下手そうな気がするしな。
しばらく歩いてプールへ到着した俺たちは、水着に着替えるために男女で一旦別れた。
俺と廉はさっさと着替えを済ませ、更衣室を出る。
「さて、あとは二人を待つだけだな……」
「わかってるよなダッキー、赤崎ちゃんのことちゃんと褒めろよ?」
「……別にそういう関係じゃねえよ」
相変わらず腹立つ笑顔を浮かべる廉。
いつもいつも、こいつは俺と赤崎の関係を色恋沙汰にしたがる。
折角顔はいいんだから自分で恋愛すりゃあいいだろうに、物好きな奴だ。
廉とくだらない話をしつつしばらく待っていると、先に漣先輩が出てきた。
ガチの競泳水着にキャップ、ゴーグルまで完全装備。
スラリと伸びた長い足から腰のくびれ、胸に至るまで全体的に均整のとれた身体のラインを惜しげも無く晒している。
「えーっと、今日ってそういう趣旨でしたっけ?」
「私はいつでも全力だ! 遊びにも手を抜かない!」
「あっ、はい……」
学校では頑張って猫被ってたんだな……この夏休みだけでイメージ完全崩壊である。
「アオっち似合ってるよ! なんかすごそう!」
「ははは、そうだろうそうだろう!」
適当すぎる褒め言葉にご満悦の漣先輩。
廉のやつ、人に言う割に語彙力なさすぎるだろ流石に。
いや、当の本人が喜んでるならいいのかもしれないけど。
そんなことをしていると、赤崎がやってくるのが見えた。
「お、お待たせしました」
赤崎の水着はピンクのフリル付きビキニだ。
華奢な身体に対してたわわに実ったおっぱいが、胸元のフリルを押し上げている。
そのアンバランスさが、どこか危うい魅力を放っていた。
俺の視線がおっぱいに吸い寄せられていく。
おっぱい揉みてえな……魔法少女の時もいいけど変身してない赤崎のおっぱいも揉みたい。
「ど、どうですか?」
恐る恐るといった様子の赤崎。
しかし、俺の思考はおっぱいに沈んでいる。
廉に肘で小突かれ、俺はハッとなる。
赤崎が不安そうに俺を見ている。
「に、似合ってると思うぞ! 赤崎らしさが出てるっていうか……そんな感じ」
「結構間がありましたけど……」
俺の反応に疑わしげな様子の赤崎。
「そ、それは……み、見惚れてたんだよ! その……可愛いと思ったから」
「ほんとですか……!」
必死に絞り出した言い訳に、ぱあっと表情を明るくする赤崎。
本当はおっぱいに見惚れてました……なんて言えるはずもなく、嘘をついたことによって罪悪感が湧き上がってくる。
いや、可愛いと思ったのは本音だから嘘ってわけでもないんだけど。
廉と漣先輩がそんな俺たちを微笑ましげに見ていた。
罪悪感とともに、羞恥も湧き上がってきた。
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