第5話 おっぱい怪人の建前

 いつもの屋上で、俺はグラウンドを見下ろしていた。

 そこでは、通常の怪人とルビーが交戦中である。


「やっぱ最近多いな……」


 ここ最近になって怪人共の出現率が上がっている。

 今日も昼食後に雑談に興じていた時にグラウンドに怪人が出現し、赤崎はお手洗いを理由に飛び出していった。


「別に見てなくたってあいつが雑魚に負けたりはしないけど……」


 今も普通にルビーが優勢だし、そもそも彼女は固有種ユニークにしか負けたことがないので他の魔法少女と比べても優秀な部類に入る。

 主に俺のせいで敗北数自体はそこそこ多いが……周囲に被害は出してないので許して欲しい。


「揉みてえなぁ……」


 近接戦闘を主体とするルビーが動き回れば、当然その大きな胸も揺れることになる。

 あまりにも素晴らしい絶景。俺はこの瞬間のためにこうして戦いを眺めているのだ。


「まだ忙しそうだけど、そろそろ限界だな……」


 グラウンドでは、ちょうどルビーが怪人を撃破したところだった。

 魔法少女の力で浄化され、制服姿に戻った生徒が倒れている。


 俺は変身し、校舎裏に飛び降りてから表に出た。


「やあルビーちゃん、頑張ってるみたいだね」

「怪人さん……」


 俺の存在に気づいたルビーは、静かに構えをとる。


「……いきます」


 そして、ステッキを構えて地面を蹴った。

 だが、その動きはあまりに緩慢で、スピード自慢の彼女らしくないものであった。

 俺は振るわれたステッキを掴み、そのままくるりと反転させつつ抱き寄せた。


「どうしたんだい、疲れているのかな?」

「そ、そういうわけでは……!」


 腕の中での抵抗も弱々しい。

 ここ最近の度重なる戦いでここまで消耗していたのか。

 これは多少手伝いを増やすべきかもしれない。


「……揉まないんですか?」


 腕の中から見上げるルビー。

 その表情は、この前のデカブツを倒した後と同じであった。

 ああ、そういうことか。


「この前のことを気にしているのかな? あれは怪人である俺がその欲望を満たすためにやったことさ。君が気にする必要はない」

「そ、そうですか……」


 俺は腕の力緩め、ルビーを解放する。

 確かに怪人化の影響を抑えるために利用してはいるが、必ず戦闘の末に行うようにしていた。

 こんなことをしていながら、赤崎優歌としての彼女には歪んでほしくないという自分勝手なワガママではあるが。


「今度はちゃんと抵抗するんだよ?」


 そう言って今度は俺から仕掛ける。

 多少手加減した、反応できるスピードでの蹴りを放つ。


「くっ……!」

「ほらほら、もっと頑張らないと」


 辛うじて避けるルビーに対し、俺は対処できそうなギリギリの速度で追撃を打ち込んでいく。

 だが、それも長くはもたなかった。

 回避が間に合わなくなり、俺の蹴りがガードの上から命中する。


「うぁっ……」


 蹴りの衝撃でルビーの手を離れたステッキが、カランと音を立てて地面に落ちる。

 そのまま体勢の崩れたルビーの背後を取り、その華奢な体を抱えて校舎裏へ移動する。


「さて、今日はここまで。みんなに見られるのは嫌だろうし、ここでやろうかな」

「は、離してください……」


 一応抵抗の素振りを見せるルビーだが、疲れからかその力は普段よりも弱い。

 俺は胸元のフリルをめくり、両手で左右それぞれのおっぱいを掴んだ。


「や、あぁっ……!」

「このところずっと我慢していてね、疲れているところ悪いが付き合ってもらうよ」


 いつものようになるべく優しく、時折先端を刺激しつつ揉みしだく。

 両手から伝わる柔らかな感触。

 魔法少女のレオタード越しのそれは、快感となって俺の脳内を駆け上がっていく。


「やはりいい、君のおっぱいは最高だ。欲望が満たされていく」

「っ……怪人、さん」

「何かな?」


 軽く身を捩りながら、ルビーが話しかけてきた。

 俺は手を緩めることはせず、そのまま言葉を待つ。


「どうして、毎回戦うんですか? 私頑張ってますけど、あなたには勝てる気がしません。それに、他に被害を出さないなら、えっと、その……揉んでもらっても、いいというか……」


 最後の方は消え入りそうな声であったが、怪人である俺の耳にはしっかりと届いていた。

 つまり街を守れればなんでもいい彼女にとって、無駄な体力の消費は避けたいということなのだろう。


「いや、それではダメだ」

「どうして、ですか……?」

「こんな変態怪人に身を許してしまってはいけない。君はあくまで仕方なく、抵抗したけど仕方なくやられてしまうんだ。そういうのは好きな人にでもやるんだよ」


 自分で言ってて酷いとは思うが、建前だろうとそういうことにしておかないと俺の罪悪感がどうしようもなく膨れ上がってしまう。

 だからあくまで、俺は怪人としてルビーを襲い、おっぱいを揉んでいるのだ。


「さて、今日はこの辺にしておこう。またね、ルビーちゃん」


 そろそろ昼休みが終わる。

 俺はおっぱいから手を離し、人目のつかない所へ跳んだ。

 今日も最高だったなぁ、おっぱい。

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