番外編 蒼依の無茶振り恋愛相談
いつもの屋上、いつものベンチ、いつもの弁当にいつものおっぱい。
俺と優歌はいつも通りの日常を送る。
そんな俺たちのもとに、珍しく来客がやってきた。
「二人とも、相談がある!!」
入口の扉を豪快に開け放って現れたのは、我らがポンコツ生徒会長の漣先輩であった。
もはやここでは猫を被る気もないらしい。
やたらとスマートなフォームで疾走し、俺たちの目の前に陣取る。
「ひゃんっ……」
「あ、ごめん」
あまりのド派手な登場に、驚いておっぱいを揉む手先が狂ってしまった。
世界おっぱ遺産の保全を行うべく最近新たに習得したおっぱい回復魔法を手に宿し、優しく揉みなおす。
「えーっと、それで今回はどのようなご要件で?」
「ズバリ、恋愛相談だ! 壁を越え、ついに結ばれた二人ならきっといい意見が聞けるに違いない!」
俺、この人のぶっ飛んだ恋愛観についていける気がしないんだけど……とはいえある意味当事者だし話を聞かないのも違うような気がする。
もしかしたら何か役に立つかもしれないし、とりあえずは話を聞いてみることに。
優歌も少し困ったような笑みを浮かべつつ、話を聞く姿勢を見せている。
「私はあろうことか、既に優歌といい関係だった籾杉に向かって堂々と恋愛相談をした」
「……なんかすみません」
「いや、いいんだ。あれは仕方のないことだった」
あの時は俺も余裕がなかったし、なかなか周囲に気が回らなかった。
正体を明かした今となっては、もう少し気を配っておくべきだったかなとも思う。
漣先輩は、気にせず続ける。
「そして恋に敗れた私は思った…………こっぴどく振られて捨てられたいと!!」
「「……はい?」」
俺と優歌の声が重なる。
振られたいってどういうことだ?
……もしかして、何か変な扉を開いちゃった感じか?
そこまでショックだったとは、なんだかちょっと申し訳ない。
優歌も困ったような表情で、何も言えないでいる。
漣先輩はそれを気にする様子もなく続ける。
「本気で恋をした上で、一気にどん底に突き落とされる哀れな私……想像しただけでもゾクゾクする」
自らの胸を抱き、恍惚とした表情で語る漣先輩。
……正直ちょっと怖い。
「しかし、そもそもそのような状況が生まれず、困っているんだ。振られる為にはまず恋愛をする必要がある。つまりモテたい!」
「蒼依さん、美人なのに……」
漣先輩も他の魔法少女たちと同様、かなりの美少女だ。
確かにちょっと天然でポンコツなところはあるが、基本スペックも非常に高い。
だが、俺はモテない理由に検討がついていた。
「多分、副会長の存在でしょうね」
「誠也が……?」
「はい、副会長が近くにいることで、漣先輩に近づくハードルが高くなりすぎているんだと思います」
生徒会副会長、
漣先輩に並び立つほどの圧倒的な成績を誇り、さらに高身長で超がつくイケメン。
知的な印象や真面目な性格もあり、校内でもトップクラスの人気を誇る。
そんな完璧超人が近くにいるのに勝ち目なんてある筈ないと、男子たちは漣先輩に近づくことを諦めてしまうのである。
「だったらいっそ、副会長と付き合うのはどうですか?」
「誠也は良い奴だし信頼もしているが……恋愛に興味がないんだ」
優歌が提案するが、漣先輩は首を横に振る。
まあ確かに、真面目が服着て歩いてるような人にそっち方面を期待するのは無理なのかもしれない。
最も近くで見ている漣先輩が言うのだから本当に興味がないのだろう。
副会長の存在感で男子は近寄らないが、当人に恋愛をやる気がない。
かなり難しい状況だな……。
「さりげなく、周囲に彼氏募集中アピールをするのはどうですかね? その気があると分かれば、少しはマシになるかもしれません」
別に副会長のハードルが下がるわけじゃないので、多分大した成果は見込めないが。
とはいえそれ以上の案も浮かばない。
「なるほど、参考になった! 感謝する!!」
それを聞いた漣先輩はそう言い残し、ダッシュで屋上を出ていった。
あまりのスピード感に、俺たち二人はそれを見送ることしかできなかった。
そして翌日。
デカデカと『彼氏募集中』と書かれたプラカードを掲げながら校内を練り歩く生徒会長が目撃され、真面目イメージを粉々に吹き飛ばしたのだった。
……さりげなくの意味分かってないのかな?
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