第2話 後輩は魔法少女
昼休みが始まり、クラスメイト達が食堂や教室で昼食をとる中、俺はコンビニで買ったパンを片手に屋上へと直行した。
怪人になった人間は理性をほとんど失い、魔法少女に倒されることでしか変身が解けないが、
現にこうして人間として生活しているのが何よりの証拠だ。
しかし、それでも完全に抑えられるものではなかった。
日に日に増していく欲望は怪人化から一年が経った俺に少なくない影響を与えており、今では人の集まるところにいると近くの女子がもし魔法少女のコスチュームを着たら……などと妄想をしてしまうようになっていた。
「はぁ、別に好きで人を避けてるわけでもないんだけどな……」
確かに怪人なる前からおっぱいは超大好きだ。だがそれを堂々とひけらかしたいわけじゃない。
そういった欲望は胸の内に留めておきたいというのが本心だった。
今は定期的に怪人として街に出現、やってきたルビーの胸を揉むことで抑えているが……正直こんなことに利用して申し訳ないとも思っている。
「いっそ適当にやられて死んだ方がマシかもな……」
通常の怪人と違い、
怪人としての性質が魂により強く結びついているだかなんだか、よくわからないが確かそんな感じらしい。
俺がパンを齧りながらそんなことを考えていると、入口の扉が開かれる音がした。
特に視線を向けることもなく食事を続けていると、小柄な女子が俺の隣にやってきた。
「どうしたんですか、先輩? そんなに暗い顔して」
「ああ、赤崎か。いや、なんでもねえよ」
一年の
入学してからというもの、毎日のように屋上にやってくるのだが、それによって俺は欲望を抑えるのに必死にならねばならないという事態に陥っていた。
「あ、先輩またそれだけですか? 私のお弁当ちょっとあげますよ」
「あ、あぁ……ありがとう」
そもそもこの赤崎こそが魔法少女ルビーだ。初めてここに来たときにすぐに気づいた。
しかしこれがまたあまりにも気まずい。赤崎はまさか俺が自分の胸を揉みまくる怪人だなんて露ほども思っていないだろうが、俺は姿を見ただけで罪悪感に押しつぶされそうになる。あとついでに興奮する。
俺は半ば放心状態のまま、赤崎に差し出された卵焼きを食べる。
「はい、あーん」
「……うまいな」
「ふふん、今日のは自信作です」
赤崎は自分で弁当を作っているらしく、屋上にやってきては俺に弁当を食べさせてきた。
クオリティは非常に高いのだが、そういうのは俺相手じゃない方がいいんじゃないかと思う。正直これを受けとる資格がない。
しかし褒めた時の嬉しそうなドヤ顔を見ていると、つい受け取ってしまう自分がいた。
はぁ、おっぱい揉みてえ……じゃなくてえーっと、何考えてたんだっけ?
「先輩? 今日はいつにも増してぼーっとしてますね。悩み事ですか?」
「ああ、まあそんなとこ」
「たまには私のことも頼ってくださいね?」
俺はたまに思考がおっぱい揉みたいに置き換えられてしまうのだが、赤崎はそんな俺を見て「ぼーっとしている」と評している。
赤崎の申し出はありがたいが、ここでおっぱいが揉みたいなんて言えるはずもなく、誤魔化すことしかできない。
赤崎はいい子だし、もっとまともな悩みがあれば相談するぐらいには信頼している。しかし俺が怪人であると知られれば、間違いなく嫌われてしまうだろう。
あんな仕打ちをしておきながら自分勝手だと分かってはいるが、それでも赤崎に嫌われたくない。
「そういや赤崎はおっぱ……ゴホン、最近忙しそうだけど大丈夫なのか?」
「はい、今はちょっと大変ですけど、じきに落ち着くはずです」
赤崎はちょくちょく用事があると言って早退したりする。
当然それは魔法少女としての活動の為なのだが、最近その頻度が上がっているようであった。これは俺が原因ではない。むしろ最近は我慢して減らしている。
「ま、そっちこそ悩みがあるなら言えよ。できることなら協力するから」
「はい、ありがとうございます。先輩は優しいですね」
「いや、そんなことねえよ……」
本当にそんなことない。だってどう考えても俺も悩みの種である。
はぁ、赤崎の微笑みが眩しい……あとおっぱい揉みたい。
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