第9話 悪い子の魔法少女

◆赤崎優歌視点


 夏休みに入った。

 相変わらず怪人は多いものの、学校がない分の余裕で一応は対処できている。


 それに、強力な固有種ユニークが出た時は決まって先輩がいた。

 私が駆けつけるより先に、怪人を倒してくれているのだ。

 先輩はとても強い。

 今まで見てきたどの怪人よりも、そしてどの魔法少女よりも強いと思う。


 それからいつものようにちょっと戦って、手も足も出ずにおっぱいを揉まれる。

 先輩は私にほとんどダメージを与えない。

 攻撃は全て手加減されており、一度でもクリーンヒットしたらあとは揉むだけだ。

 正直他の怪人と戦うより楽だし、先輩にならおっぱいを揉まれてもそんなに嫌じゃなかった。


 先輩はショッピングモールでのことで悩んでいたみたいだけど、それは私の力不足が原因。先輩は私を助けてくれただけだ。

 それよりも、先輩が私のことを「大事な人」と言ってくれたことへの嬉しさが勝っている。


 しばらく屋上に行かなかったのは気持ちの整理をつけるため。

 落ち込んだまま先輩の前に行きたくなかったからだ。


 それに、私だって先輩を騙し続けている。

 本当は先輩が怪人だって知ってるのに、避けられるのが怖くて嘘をついている。

 先輩が悩むことになったのだって、私のワガママのせい。

 だからむしろ、怪人の先輩よりも魔法少女の私の方が悪い子なのだ。


 あと、夏休み中は屋上で会えないけど、その代わりに先輩の連絡先をゲットした。

 私が寂しくなったら通話に付き合ってくれる。

 やっぱり先輩は優しくて面倒見がいい。


「会いたいなぁ、先輩……」


 それでもやっぱり、人間の姿同士で会いたい。

 そしてたわいもない話で盛り上がるのだ。


 自室のベッドに寝そべって、ぼんやりとしていると、怪人出現の知らせが届いた。


「えーっと、場所は……ここか」


 これは街中の至る所に設置されている探知魔法を付与した通信機から送られている。

 ほとんどの怪人がこれによって発見され、そしてその地域担当の魔法少女が対処を行う。


 ちなみに先輩は探知魔法にかからないらしく、魔法を使用して魔力が放出された時にのみ反応するようだ。


 そして今回の反応は私のエリア。

 家の中で変身し、窓から飛び出した。


 現場に到着すると、三体の怪人が暴れていた。

 急いで人払いの魔法を使い、周囲の人を避難させる。


「これ以上好き勝手させない! やあっ!」


 手始めに魔法弾を放つ。

 私の魔法弾は威力の割に消費が激しく、あまり使いたくはない。

 ひとまず暴れる怪人の注意を引くために使っている。


 三体の怪人が振り向いたのを確認し、私はステッキに魔力を込める。

 もはや魔法ですらない力技なのだが、私の使う技の中では最も威力が高く、消費も少ない。


「ギェエェェエ!!」

「遅い……! はっ!」

「グギャアァッ!!」


 怪人のうち一体の突進を避けつつ、ステッキでカウンターを入れる。

 まずはこれで一体。

 倒れた怪人は元の姿に戻った。


 それを見た残りの二体は、同時に攻撃を仕掛けてくる。

 以前までは牽制しつつ各個撃破していたのだが、今の私は違う。

 さらにステッキに魔力を込め、ステッキをより長くする。


「私はもっと強くならなきゃいけないの! はあっ!」


 そして二体の怪人をまとめて攻撃。

 威力とスピードは通常時に劣るが、長いリーチによって攻撃範囲がかなり広がっている。

 あの時の反省を活かし、対多数用の新技を使えるようになっておいたのだ。


 そしてそこからステッキを元に戻して追撃。

 怪人は苦し紛れの反撃をするが、その程度の攻撃で止まることはない。これで残り一体。


「これで終わり!」


 最後に背後から飛びかかってきた怪人を振り向きざまに殴打し、全ての怪人を撃破した。


 しかしそれにしても怪人が多い。

 前までは同時に複数出現することなんてほとんどなかったのだが、今では当たり前のように出てくる。

 新学期が始まるまでになんとか解決できればいいんだけど……今のところ手がかりは何もなかった。

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