第11話 好きな魔法少女
食事が終わってから、軽く談笑しつつゆっくりとした時間を過ごした。
もう周囲はすっかり暗くなり、俺と廉は火の横で雑談を続けている。
残りの二人はというと、食べ過ぎでグロッキーになった漣先輩がテントに引っ込み、陽葵さんがその世話をしている状態である。
テントは二つあり、当然ながら俺、廉のテントと日葵さん、漣先輩のテントで別れている。
「なあダッキー、お前魔法少女に興味ある?」
「っ……、まあ、多少は?」
急に魔法少女の話を振られ、つい驚いてしまった。
動揺がバレていないか少し心配になる。
まさか俺がその敵をやってるなんて思わないだろうが。
「いやぁ、知っての通りだが俺は魔法少女のファンでさぁ」
「いつも言ってるな」
「でも学校でその話ばっかりするのはちょっと憚られるわけよ」
「別にいいと思うけど。他にもやってるやついるだろ」
魔法少女たちはその正体はともかく、存在や担当については割と普通に知られている。
人払いすると言っても、遠くから戦いが見えることもあるし、怪人のもとへ駆けつける瞬間は目撃者も多い。
ネット上では魔法少女の強さとか見た目とか、いろいろな分野で無駄に白熱した議論が繰り広げられていたりする。
「魔法少女ってみんな可愛いじゃん? 男なら誰だって興味あるはずだって思ったわけよ」
「まあ、そうだな」
なお、興味の方は多分にある。
興味がありすぎて怪人にまでなった男だぞ俺は。
俺の肯定を聞いた廉は、若干興奮気味に詰め寄ってくる。
「で、ダッキーは誰推し? 俺はトパーズなんだけど」
「あー、俺はルビーかな……うん」
「いいねぇ、ルビーはお前のとこ担当だし、まさに魔法少女って感じのビジュアルだよな」
トパーズは今俺たちがキャンプをしている街の担当だ。
『魔法少女のおっ〇い考察スレ』などというアホな掲示板があり、当然ながら俺はそれを日常的に眺めているのだが、その中で行われた胸がデカい魔法少女ランキングで満場一致で一位を獲得するほどのおっぱいの持ち主である。
是非とも一度揉んでみたい。
「お前はトパーズのどういうところが好きなんだ?」
「お、それを聞くか? 話せば長くなるぜ……」
「じゃあいいや」
どうせろくな事じゃない。
浅はかな男子高校生の思考など容易に想像がつく。
いや、おっぱいで決めてる俺が言えた義理ではないんだけども。
まあでも、おっぱいを抜きにしても俺はルビーが一番好きだ。
魔法少女として戦う姿も、普段の可愛い後輩としての姿も。
「そういうお前はどうなんだよ、ルビーが好きな理由は?」
「……単純に身近だからってだけだよ」
「ふーん……で、本当は?」
「……何もねえよ」
この野郎、こういう時だけ無駄に勘がいい。
「ま、いいけど」
何かを察しているのか、はたまた何も考えていないのか。
無駄に腹立つ笑みを浮かべながら、廉は引き下がった。
それから廉もテントに戻り、外にいるのは俺だけになる。
「これからどうなるかね……」
空に浮かぶ月を眺めながら、物思いに耽る。
最近は
おっぱいを揉む口実が増えることを喜びつつも、やはりルビーの負担が大きくなってしまっていることが気がかりだ。
それに、何か大きなことが起こるのではないかという不安もある。
怪人の大量発生は、自然に起こっていると結論づけるのが難しい域にまで達していると思う。
そこに何者かの思惑があるとするなら、それを俺が断つ。
彼女を騙し続ける罪を塗りつぶしてしまうくらい、力になってやりたいと思う。
俺を元気づけてくれた赤崎に、全力で応えたい。
永遠の片思いで終わってしまうだろう俺と赤崎の関係。
それが中途半端に終わってしまうのだけは、絶対に避けたい。
ま、何もないに越したことはないんだけどな。
「はぁ、もう寝るか……」
最近はやたらと心配なことや不安なことばかり考えてしまう。
火を片付け終えた俺は、廉の眠るテントへと入った。
翌朝、寝ぼけながらテントの入口を開ける。
朝の日差しと共に、衝撃的な光景が目に入ってきた。
青系のコスチュームを身に纏う魔法少女と黄色系のコスチュームを身に纏う魔法少女が、四本の腕を持ついかにも強そうな
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