33 「魔王が所持しているパターンでしたか」

 何日か使ってリフレッシュした僕たちは今、孤島のダンジョン17層にいる。

 そしてヒントを発見した。

 といっても"レガリア"のではなく、隠し扉の開け方だったんだけど。


 隠しスイッチだったり。

 クイズみたいなのだったり。

 特定のアイテムが鍵だったり。


 そんなフンワリとしたヒントが隠されていた。孤島の魔王め……ッ。しかも11層から20層を行ったり来たりする必要があるっていう悪辣さ。

 絶対に許さない。


 絶対だ!


 現実になったせいで余計な知恵を回してくれちゃってさ。でも単純に戦力の増加みたいなことじゃないのは、人間からしてみれば優しみがあるのかもしれない。

 僕的には頭使うの増やされると困る。


「2週間かかっちゃったね、先生」


「それでもかなり早いほうですね」


 適正レベルを大幅に上回ってるのが原因だけど。お邪魔な魔物もペーンペーンとブッ飛ばして進めてしまうからな。


 最終的にマノンが最初に見つけた、隠し部屋のありそうな雰囲気の場所。

 そこがレガリアのヒントがある場所だった。

 勇者力は侮れない。


 そしてそのヒントも厄介なものだった。

 ヒントと言うか答え。


「魔王が所持しているパターンでしたか」


 他所の魔王がレガリアを所持しているっていう、wikiにも書かれてないパターンだった。当然だけど僕も初見。

 現実化が原因だろうなあ。


 聖女……どうしようかなあ。今さら新しい人とパーティを組むなんて嫌だし。聖属性はマノンも持ってる。

 そろそろ鍛えてもらうか?


 マノンの故郷を強化するアイテムだし、引き受けてくれると思う。対魔王戦が決定したし、勇者がバレてもあんまり問題にならないような気もする。

 魔王を倒すのが目的になったからね。


「こうなると戦闘力の強化を目指すのが早いですね」


「分かった!」


 元々こっちの魔界にも侵入してみる予定だったし、稼ぎつつ侵攻していくのが良いかな。途中で1回王国に帰ることになるけど。

 装備強化のためベニ本体のところへ向かわなくては。


「その時にでも村のみんなにお土産を渡しましょう」


「お土産、また買いに行かないとね」


 食べちゃったからな。

 全部。

 また食べちゃうかもしれないので……帰る直前に買おう。


 常夏フルーツが美味しいのが悪い。

 全部。

 生ももちろんおいしいし、ドライフルーツも手軽に美味しい。


 悪魔の食べ物だよ……。


「ということで、装備の方向性を考えましょう」


「どんなこと?」


「私たちは剣での攻撃になりますので──」


 切れ味を良くするのは定番だし、貫通力が上がってるのも良いものだろうね。

 他にはステータスにバフが掛かるのとか、頑丈なものとか?


 他にはエンチャント付きが有名だね。

 炎や氷みたいな属性系だったりはもちろん、ゴブリン特攻や悪魔特攻、ドラゴン特攻みたいなのものとかさ。


「ああ、ドラゴンキラーみたいな!」


「ファントムベインという、霊体にも攻撃可能な武器とかもありますね」


 まあ属性系とかファントムベインは精霊に頼んでエンチャントすれば、どうにでもなるから注文して作ることはない。ドロップで出たら使うかもしれないってくらいかな。


 素材行きだとは思うけど。


 うんちゃらキラー系の装備は……持ち替えが面倒だよ。

 現実ではインベントリ開いたら時間が止まるわけでもないし、危険なのでやらないほうが良い。


「すぐ必要なわけでもありませんから、ゆっくり考えてください」


「王国に帰るまでってことだね」


「それはいくらなんでも遅いです」


 素材が必要なのもあるから、もう少し早くしないとダメだよ?

 マノンが狙う効果を得るためには、狩っていく魔物も変わるからさ。


「あ、なるほど」


「今月はダンジョンの探索を進めて、来月に素材の確保をしましょう」


「はーい」


 王国へは来月終わりから再来月頭を目安に帰還ということで、パワーアップ月間の始まりだ。


「防具はどうするの?」


「対魔法装備が良いですね」


 たぶんだけど後半になると悪魔とか増えだすはずだし。


「それも未来の情報?」


「…………」


 ?

 あ、僕はそういう設定だったか。

 アブナイ忘れてたよ。


「そうです。深い階層にテキパキ潜る方法もありますから稼げますよ」


 トラップのテレポーターを使った攻略だ。

 さんざんやってきたのでバッチリ記憶してる。

 問題ないだろう。

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