39 「さすが魔王。やり方があくどいですね」

 穢れた夜のおかげでスッキリしてるので、朝からガッツリ進んでるよ。ダンジョン攻略が。


「一気に行きます」


「はい!」


 スケルトンナイトやスケルトンロードを盾に、魔法の準備するアークデーモン。


「疾風の舞」


 僕はナギとの連携技。


「聖牙──突ッ!」


 マノンは聖属性を纏って。


「たあああっ!」


 突撃だ。

 僕たちはアサルト系スキルを使い、ボスのアークデーモンへ近づく。


 マノンの気合は……もう何も言うまい。

 ノリノリになるならオッケーってことで許しちゃう。

 可愛い気合なので、僕は若干ほのぼのしてしまうんだけどさ。


「ていっ!!」


 アークデーモンのアゴをかち上げ、魔法の発動を邪魔したマノン。

 続く一閃がスケロードに阻まれる。


「なかなかお強い」


 だけどもう一人の僕がアークデーモンから錫杖を奪う。

 そして本体が──


百連ビャクレン


 ──スケローを骨粉にした


昇聖双斬ショウセイソウザン──極み!」


闇の精霊ヤヤ、闇沼を」


 スケナイたちはヤヤの"どこかに沈む黒い沼"の向こう側に行ってもらった。

 はい、オッケーィ。


「ドロップは?」


「スケローくんの分で良いでしょう」


「戦闘中には絶対言わないでよね、それっ!」


 笑っちゃうそうだ。

 そうかな?


 でもスケルトンナイトとかスケルトンロードとか……。

 長くない?

 名前が。


 素材をポイポイとインベントリやマジックバッグに放り込みながら、魔界への入り口を捜索する僕たち。


「ベニも手伝ってください」


「きゅー」


 こればっかりはダンジョンマスターのベニが一番得意のはず。

 想像もできるだろうしね。

 ダンジョンの隠し扉の場所なんて。


「きゅー」


「呪いの邪神像?」


「これですか。そして複数必要と……」


 うわぁ、余計な手順が必要なヤツになっちゃってるじゃん。他のボスも、あと何体か狩る必要が出てしまったか。


「49層から上に行きながら倒してみましょうか」


「そうだね」


 いくらなんでも弱いボスは持ってないと思いたいけど……どうだろうか?

 っていうかこんなことなかったのにな。ゲームでは普通に魔界への扉が開いたというのに。


「さすが魔王。やり方があくどいですね」


「先生が暴れ散らかすからじゃ……?」


「きゅー」


「わ、私は違うよぉ」


 僕たちのせいでセキュリティ強化されてしまったのか……言われてみれば、それはそれで凄く現実っぽい。

 現実化したから仕方ない、といってもなあ。


「予定外の行動は、予定外の時間を使うので嫌いです」


「でもそれって冒険してるっっ、て感じだよ?」


 チョットわくわくしてるっぽいな。

 マノンは楽しんでいる様子だね。

 効率ばかり求めても良くなかったか。


「マノンのしたいように、してもらうのが一番かもしれませんね」


 2周目の人生だから効率を求めてしまうと伝える。


「もう未来は変わってるって言ってたもんね」


「ええ。先回りばかりというのも、マノンを見ていると良くないのではないかと感じました」


 マノンがリーダーってことで。

 勇者だし。

 すると事態は好転し始めた。


「雷牙──突ッ」


「グギャアアア」


 マノンのアサルトスキルが、キメラゴーレムを貫いた。

 油断してたな、コイツ。


「先生!」


「ええ。ラッキーなことです」


 認証キーを使おうとしていた魔王軍のヤツ。

 しかも自前の魔力ではなく物理的な認証キーを持っているヤツ。


「小さな綻びが破滅をもたらすでしょう」


「占い師みたいなこと言ってる」


「占い師はもっと良いことを言うのでは」


「そうかなあ?」


 僕たちはウッキウキになった。

 ダンジョンの便利機能は便利だからね。

 そりゃあもうウッキウキになっても仕方なし。


 家に帰るのも簡単になったので、今回はここまでの探索にした。テレポーターを使うために、アチコチ移動する必要もないしな。

 魔界の扉を開くのに必要な、呪いの邪神像集めのボスマラソンも不要だよ。


「次に来る時は直接行っちゃう? 魔界に」


「行っちゃいます。それも魔王城側の出口に直接」


「じゃあ2日くらいはゆっくりしようよ」


「良いですよ」


「明日はお休みっ」


「了解」


 爛れた夜を過ごして、健全なデートをして、穢れた夜を過ごしてから魔界に入った。

 スッキリグッスリバッチリのパターン、入りました。

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