38 魔王だって簡単に倒せるように修業したから問題ないね。

 孤島の魔王を倒してレガリアを獲得する。

 そのために常夏の国へやって来た僕たち。


 借家は前と同じところの他に、ゴブリン換算で月額520匹の家が空いていた。ここは中央区に近い場所だから少々お高いね。

 しかし便利ではある。


 買い物しやすいし、ダンジョンにも行きやすい。


「どうしますか?」


「前と同じところで良いんじゃない?」


 前回借りた場所は静かなところだったし、ダンジョンの中にいるほうが長いから、とマノンは言う。


「それもそうですね」


 必要なものは全部インベントリにあるから、すぐに住めるようになる。


「1ヶ月程度しか空けてないから、掃除も楽です」


「今日中に終わらせて明日には潜りたいよね」


「フフ、そうですね」


 マノンも普通の生活が、温いものに変わってしまったようだ。

 やはり勇者とは戦闘民族。

 そして勝利こそが愉悦なのだ、になってるのだ?


「今回は急いで潜るということはしません」


「でも魔王戦なんだよね……緊張する」


「強くなった実感はあるんでしょう?」


「うんっ」


 持ち前の勘の良さに加えて、鍛えたフィジカル。

 それに発現したカウンタースキルがバッチリとハマった。


 ツリーでスキル上限のLV3まで上げたから、余程のことがなければ今のマノンはかすり傷すら受けなくなっている。

 なので装備のブースト用に、自分たちの血液をビンに入れて数個用意してある。


 僕も被弾はしないのだ。


 そしてステータス的に、もうちょっと欲しいなって部分は装備で補った。

 孤島の魔王くらいなら問題ない状態だ。


「1週間でダンジョンを攻略、孤島の魔界に侵攻します」


「分かった!」


 ダンジョンのボスは魔法特化のアークデーモン。

 僕たちはAGIが高いから、接近戦を仕掛けて行動阻害のアクションヒンダーをやってれば、何もさせずにクリア可能だ。


 なにせ安心安全はモットーなので。

 魔王だって簡単に倒せるように修業したから問題ないね。


「魔界ではどう動く予定?」


「変装して魔王城に向かってもいいですし──」


 片っ端からなぎ倒してもいい。

 そのほうが素材も増えるし経験値も得られる。


「色々とお得です」


「こっそり魔王城にいこうよ……」


「なぎ倒さないのですか?」


「え? だって魔界で生活してる魔王軍ってだけでなぎ倒すの、何か悪者みたいだもん」


「人間の世界を侵略しに来てるんですが?」


 そう言えばそうだったって顔するマノン。

 ダンジョンで一方的に蹂躙してたからかな?

 そういえば……侵攻します、とか僕が言ってた可能性もあるな。


 僕のせいかあ。

 まあ、どっちの陣営も自分たちの利益で動いてるんだし平気平気。


「人間には悪さしかしてないので問題ありませんよ」


「一番悪いのは先生な気がしてきたっ」


「ヨシ、お掃除も終わりました。お風呂にしましょう」


「何か誤魔化してる?」


「イイエ?」


 グッスリ睡眠を取るために、スッキリする。

 バッチリだ。

 ベニは最初から起こしていないので。


「せ、先生ッ……ッッッんん、しょれわっ、らめなやちゅぅぅっ」


 僕は何回もヘヴンさせられた、恥ずかしいポーズで拘束されて言葉にできないくらい心がハッスルしてしまった、あの時のマノンの技をマノンにしてあげた。

 秘かな復讐は果たされたのだ。


「きゅー」


「全然そんなことありません! ねっ? マノンッ」


「そ、そうそう! そんなことないよっ」


 僕たちは別に変態じゃあない。

 だってやる気も気力もスッキリ、バッチリ、グッスリ、シャッキリだし。

 ゲフンゲフン。

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