40 序盤で最強プレイ──じゃなかったら、強敵なはず。

 魔王城側のダンジョン出口から魔界に侵入する。

 でもいきなり魔王戦、というわけにはいかないのが世の中の常。

 四天王を倒してボス部屋までの鍵を手に入れないと進めない仕組みだ。


 一斉に襲って来ればいいのにね。戦闘力は集中させたほうが強いはずだし。でも全員部屋に鍵をかけて始末しようとしてくるのは、ゲームと一緒だ。

 現実になると不自然だが、強者の矜持ってヤツなのかもしれない。


 そのせいで僕たちは──安全に、順番に、処理していけたっていう。

 何気に関係者以外が部屋に入ると、オートロックが掛かるっていう技術力があるんだなあって思った。


「あとは魔王と側近2人です」


「……それって六天王にならないの?」


「……四天王は格下なのかもしれません」


「大事な鍵を預かってるのに」


「……スケルトンを呼び出す側近なので、もしかしたら側近のほうが格下かもしれません」


「側近なのに」


 そんなこと僕に言われても分かんないですー。

 効率厨な動きをしなかったら、ここまで楽勝じゃないと思うしなあ。なので本来は強敵なはず……だよ?


 四天王は個の強さ。

 側近は数の暴力だしスケルトンを魔王が強化するはずだし。

 序盤で最強プレイ──じゃなかったら、強敵なはず。


 まあ、レベルを上げて物理で殴る~聖属性を添えて~、だね。

 これが安全だよ。

 現実なので低レベルチャレンジはしない。


「マノン、作戦は?」


「私がタゲを取るから、先生は遊撃で補助して──」


 隙を見て側近を倒す、と。

 僕が思ってる作戦と同じだ。

 ずっと一緒にいたから考えも似てくるのかな。


 先生は嬉しいですっ!


「了解。バフを掛けたら突入しましょう」


「うん。いよいよだねっ」


 木の精霊ジュカ闇の精霊ヤヤからは防御を。

 風の精霊ナギからは動きの。

 水の精霊ハパからはスタミナのバフを。

 そしてブラッドシリーズに自分たちの血を与えて、っと。


「きゅー」


 頑張るが良いとのお言葉をもらって、僕たちは謁見の間へと突入した。


「これほど早く勇者が現れるとはな」


 堕ちた天使──魔王サタンの登場だ。

 定番だけど、やっぱりイイネ。


「ム? いや、待て。そなた──他国の勇者か」


 ラストレガリアでは威厳たっぷりのイケオジ系魔王。そしてやっぱりこの国にも勇者はいるっぽいな。まだ育ってはいないようだけど。

 プレイヤーではなさそうだけど、勇者が湧く世界って確定かな。


「クフフ蛮勇も極まったものよな。フハハハハ」


 勇者素材が手に入るつもりで、ご機嫌なご様子の魔王くん。

 だけど日本人には"こすられ過ぎ"て、いヤツになってるサタンくん。

 現実になっても恐怖はない。


 萌え文化のせいで可愛くなってしまったサタンちゃんがチラつくので……スマン。


「好都合である。そなたらの血肉、我がもの──」


「とおおっ!」


 マノンにも恐怖はないようで良かった。相変わらず敵の話は聞かないマノンが突撃する。

 まあこれは作戦だけど。


「聖牙──突重ね!」


 そして作戦通り聖光を振りまいて、影を作る。


「貴様らッ!? ええい、やれ!」


 側近のアークデーモンが、スケルトンを呼び出そうとする。

 だがマノンの灯した明かりで僕のほうも準備は完了しているよ。


 もう一人の自分ワンモア闇の精霊ヤヤの作った影を渡り、敵の背後にできた影から飛び出す。

 斬撃を喰らわせるのが予定の行動。


「「昇刃連斬」」


 からの──


「「落葉──重ね」」


 ──しているうちに本体の僕は、魔王へと接近する。


「馬鹿な!」


「想定より強いですね」


「先生のウソツキ──っとぉっ、流し大輪ッ」


 だってこんなの知らないし。

 サタンが剣技使うなんて初体験だもの。

 現実化したサタンは剣技を習得しているようだ。


「ですが問題ありません」


 マノンはちゃんとカウンタースキルも使えてるよ。

 それにアクションヒンダーで僕が魔王の技を潰すからね。


「マノン」


「三日月連舞!」


「ぐあっ」


「違います!」


 普通に倒しちゃダメェ!

 レガリアをドロップさせないと意味がないんだから!


「アッ、せ、聖雷撃ィ! たあっ!!」


「あり得ぬ! 我がこのような小娘どもになぞ!」


 セーフ!

 さすが魔王。タフで良かった。

 ヌオオオオオと魔力をたぎらせようとする魔王サタン。


 でも──


「させませんよ」


 ──第二形態なんてね。

 現実化したからゲームのルールに縛られず、倒しきれるはずだ。


百連ビャクレン──重ね4つ」


「ぐぅぅぅォォオオオオオッ」


もう一人の自分ワンモアでさらに1分身追加。4人の僕で連撃を加えて邪魔をする。


「もう一回だよ、魔王っ。覚悟!」


「くたばる──」


「聖雷撃ィィィッ!!」


「──がィギャアアアアッ」


「発火するまで続けてください」


「ぇええっ!?」


 魔王が持ってるレガリアは、聖属性で燃やさないと出ないから。


「仮にも魔王です。聖属性で消滅させないと復活します」


 そういう理由を付けて誤魔化しておく。


「あ、はいっ!」


 まあ復活はさせるんだけどね。

 僕が。

 だって使う用事があるので。


「キサマら──」


「やああああああっ!」


 気合を込めたマノンの一撃。

 魔王の断末魔もかき消された。


 はい、オッケー。孤島の魔王クリア!


 レガリアも予定通り獲得できた。

 でも先生はヒドイって評価になったよ?


 アレ?

 ヒドイことしてないはずなんだけどな?

 アレェ?

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