30 オトナパーフェクト

「えっと、ごめんなさい。私物が混じってるって思わなかったから」


「え? 私物を置いておけるんですか!?」


 ダンジョン産オブジェクトじゃなく、まさかの私物だったとはね。どうりで雰囲気の合わないものがあったわけだ。ダンジョンに私物を置くなんて考え、したことなかったから思いもしなかった。


 ダンジョンに取り込まれると思ってたからな。

 だけど違うようだ。

 そのせいでマノンの破壊衝動の犠牲になっていたっていう……。


 ベニにあとで聞いてみよう。

 チョッカイ出してきてると思ったが、こっちが悪かった件……。


「大変申し訳なく」


 そりゃあ確かに他所ものが、荒らしちゃあダメなヤツでした。

 だって私物だもの。


「これと、これ。あ、あとあれと、それもお持ちください。大変なご迷惑を──」


「せ、先生先生っ! 始まってる! 先生やりすぎが始まってるから!!」


 え? だって迷惑かけたし、偉そうに説教しちゃったし、お詫びの品は渡さないと、じゃない?

 幸いにも僕はダンジョン成金。


 アイテムもいっぱい持ってるよ。

 だから安心していい。

 僕たちの探索に影響はないからさ。


「4人いらっしゃいますし、量は増えますが?」


 ポーション類ならいっぱいあっても困らないじゃん?

 余ったら売れば良いし。

 いや、さすがに僕だって知らない人にマジックバックは渡さないよ?


「そのぉ、お気に入りのコップ程度だったから……」


「遠慮せずとも」


「えーっと、あ、ありがとう……」


 でも出した半分しか持って行かなかった。僕たちの物資は潤沢だから、持って行って良いって言ってるのにね。

 お詫びの気持ちっていうのもあるんだし。


「先生は加減を知るべきだと思う」


「マノン」


 しみじみと呟かれた。

 今の、綺麗なお姉さんっぽかったよ。

 あどけなかったり、綺麗だったり、無邪気だったり。


 パーフェクトか?

 やはりマノンはパーフェクトだな!

 今のマノンはオトナパーフェクトも混じったし、スゴクパーフェクト。


「先生?」


「いえ、ダンジョンでは不要なものは取り込まれると、思い込んでいましたので」


 どういうことなのかなって考えてたと誤魔化した。

 僕はパーフェクト二次創作現実のことなんて、微塵も考えていなかったのだ。


「ベニちゃんは知ってるんでしょ?」


「きゅー」


 ベニが言うには、ダンジョンマスターによって違うだろうってことだった。それもそうか。ダンマスの数だけ方針があるのは当然だ。

 ベニは取っちゃうそうだよ。


 素材にしたり、参考にしたりだって。

 ここのダンマスは、居座らせることを目的にしてるのかもしれないとベニは言う。

 ダンジョンに来る人口的な問題ではないか、というのが彼女の回答だった。


「知ったところで知的好奇心を満たすだけの情報でしたね」


「チテキコーキシン」


「人は知りたいという欲を捨てられませんからね」


「なんでなんで、っていうアレかあ」


「それです。頭良さそうな言葉を使ってみました」


「んふーっ、急にそういうこと言うのっ、ヤメテッ」


 なんかツボにはまったマノンが笑い転げた。それで破壊衝動が治まるのなら、いくらでも笑ってくれ。

 キミには無邪気な笑顔が似合うんだから。


 ニヨニヨしながら木箱や壺を割らないで欲しい。

 切に願う。


 僕たちは、なるべくテキパキ潜るのが目標だしな。

 私物混じってる可能性があるので、マノンの破壊行動もなくなるだろう。


「ダンジョンっぽいものだけにするべき?」


 行動はしなくても衝動はあるんだよなあ。


「その判別法もアヤシイですね」


 ダンマス次第だから、やらないのが一番って気付こうよ。


「マジックバックに入らないものは、ダンジョンの設備です」


「おーっ、ありがと! 先生っ」


 ドロップするものは入る。

 置いてあるものは入らない。

 誰かの私物は入る。


「ダンジョンの不思議だね」


「そうですね……」


 そういうシステムだからとしか言いようがない。ゲームのシステムだし。現実になった時に、その理由を説明するのは難しいよ。

 だがしかし──


「先生……この方法、なんか違う」


 ──らしい。

 壊す前に調べるのは自由気ままな行動じゃないからかな?

 一旦拾うボタン押して、拾えなかったら攻撃ボタンってことだしな。


 拾うモーションがもどかしくなるんだろう。

 僕だってそんなのはイヤだ。

 ダンジョンに私物を置くんじゃあない!



 なんにせよ、彼女の破壊衝動は治まった。

 これでサクサク進むことができるだろう。

 ただ……人が来ない階層に潜ったら爆発しそうなのがなあ。


 それを狙っているのか、若干歩みも速い。

 テキパキマッピングもやって、宝箱を空けるだけになったマノン。


「焦りは禁物ですよ」


「分かってる。無駄を省いてるだけだもん」


 自覚はあったようで安心です?


「明日からが本番だもんね」


 10層にはもうすぐ到着予定。10から20層の探索は半月くらいをみてる。丁寧に探索する必要があるからな。

 サイキョー勇者村のためにも。


 レガリアを手に入れて、不安のない拠点を築くのだ。


「本番に備えてマノンママのご飯にしましょう」


「さんせーい」


 今日は隠し部屋でお泊り。

 野菜の煮物とポークステーキ、ポタージュスープ。それに街で買い込んだナンをチョイス。


「ニンジンも食べなさい」


「うっ、ニンジンは許して欲しいなあ」


 食べるのです。

 このニンジンはDEXが上がるのだから。

 10本分で+1だけど。


 なのでレガリアの力で、せめて5本で+1になって欲しいなって願ってる。

 カボチャは1個でVITが+1だった。

 つまり……1.5㎏くらいは食べないといけないんだ。


 イケなくもないが、試したら辛かったので……せめて半分の量でお願いします。

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