31 つまりダンジョン全部、難易度が上がってる可能性あり。

 朝ご飯からステーキを食べた僕たちは、元気いっぱいムーブで孤島のダンジョン10層を蹂躙している。

 このダンジョン、敵の強化は5層ごとが目安っぽい。


 ベニは甘すぎたと反省している。

 王都側のダンジョンは、初心者用って運営が決めちゃったから仕方ないよ。

 ここは中級者用だし。


「やああああっ──」


 なのでまだ弱い部類のヤツだけど、ゴーレム系もチラホラ出てくる。

 王国ではレアな魔物だから、王都の冒険者ギルドにいた試験官もレアキャラってことになるね。


「──三日月連舞ッ」


 弱い部類のゴーレム。

 それでも剣とは相性が悪い敵だ。

 打撃系武器も習得しておくべきだろうか。


 今はマノンのステータスでも、ゴリ押し可能だから良いけどさ。もっと硬いアダマンタイトのゴーレムが出てきたら困るしな。

 そうそう、武器も新調しなくちゃ。


 僕はゴーレムの身体を駆け上り、そこから高くジャンプ。


「落葉──重ね」


 高速で前方宙返りを繰り返しながら落下して、上半身から下半身まで連撃を叩き込む短剣のエグイ技。

 これさえあればだいたい何でも解決する剣技だ。


 でも軽戦士系のスキルだからな僕たちは。

 重い一撃がないのがネックでもある。


 今はゲームじゃないから、攻撃喰らっても気にせず反撃なんてことはできない。痛みもあれば出血もする。

 HPが1割を切らなければ十分動けるよ、なんてことにはならないからな。


 ハンマーやメイス系。次点で大剣か……。僕たちにはに合わない系統なんだよな。結局は剣と短剣がカッコイイし似合う。

 このまま極めたいところでもある。


 つまり相手の防御を抜ければ良いだけ。バフと装備の強化で頑張ろう。武器の習熟という問題もあるしな。僕だけならスキルポイントを使えば習熟可能だけど、マノンは一から覚えなおしになってしまう。


 ツリーが生えれば剣も他の武器も、両方使えるようになる。だけど生えなかったら剣技のほうに悪影響が出てしまいそうだ。

 やはりカッコイイを極めれば、強さも極まっていくはず。


 敵の装甲は削れば良いのだ。


「敵がちょっと強くなったね」


「ええ」


 今のところはまだまだ余裕だし、休憩時間にでもマノンと相談かな。

 一応。


「先生の剣技を見るのも久しぶりだ」


「そういえばそうですね」


 最近はマノンにバフ掛けるくらいだったし、精霊で攻撃することが多かったからな。そもそもステータスが高くなってるからスキルを使わなくても良い。

 さっきのは使いたくなったから使っただけという。


「本来は精霊魔法士が適正ですからね」


 暗殺者の剣技はオマケではある。

 ステータスのおかげで強いけど。


 ただ、ゴーレムみたいなのには毒も効かないので、物理攻撃も必要だ。

 魔力注ぎ込んで木の精霊ジュカで殴るのもありといえばあり。

 立派な物理だよ。


「んー、この辺に隠し部屋がありそうな雰囲気」


 10層は未完成のマップしか売ってなかった。なので未踏破の部分に行けるなら買い取るので、渡して欲しいとギルドからは言われている。

 マッピングを丁寧にやっていけばお金にもなるね。


 マノンが怪しい場所を見つけてくれるし、僕たちの目的にも近付く。


「全体を書いてから探すか、それとも発見するたびに調べていくか。マノンはどっちが好みですか?」


「全体の広さも分からないから発見したら調べる。そして隠し部屋なら入るっ!」


「分かりました」


 隠し部屋なら休憩所にするのにも丁度いい。オープンな部屋よりは安全性が高いからな。他の冒険者とのいざこざも少ないだろう。

 マップが中途半端にあるなら、この階層でも活動してるパーティはいるはずだし。


 風の精霊ナギの索敵範囲に冒険者は発見していないから、限られたパーティしか到達してないのかもしれないが。正規のシナリオスタートである、マノン16歳の今のタイミングならこんなものか?


 いや……でもゲームの時はマップなんて売ってなかったよな。常夏の国の人たちは、もしかしてシナリオの設定より強い……?

 プレイヤーがいないから、キャラが動いてるということなのだろうか。


「なかったかあ、残念」


「では探索を続けましょう」


「小ぢんまりした部屋だったらいいね」


「落ち着けますからね」


 あと3時間くらいを目途にしておこうか。根を詰め過ぎても良くないし。今回の探索でレガリア関連のものを見つける必要もない。

 見つかればラッキーくらいで。


 もし見つかったら、支払った家の賃貸料がもったいないし?


「ウーン、そこそこ進んだけど見つからないね」


「まあ全部の階層にあるかと言われれば、そうでもないでしょうしね」


「やっぱり最初に見つけたところが一番アヤシイ気がするよ」


「きゅー」


 ベニが言うには、別の階層で鍵を手に入れるパターンも考慮しろとのこと。


「ベニも知っていましたか」


 そのパターン、ラストレガリアではラスダンだけだったはずだけど。ベニがそんなことを考えてるというのも、現実化の影響なんだろうね。

 つまりダンジョン全部、難易度が上がってる可能性あり。


 僕の知らないDLCだったらクヤシイ。

 でも現実で無料でプレイできていると考えれば……オトク?


「うわぁ、そうだとしたら先にマッピングを終わらせるほうが良いのかな」


「休憩する場所が見つかれば、マッピングに切り替えましょうか」


「はーい」


 最悪、魔力を使って木の精霊ジュカに部屋を作ってもらう手段もある。

 自然が侵食したような場所があれば魔力も込めなくていいしな。


「マノンのやりたいように。冒険を楽しんでください」


「ありがと、先生」


 結局隠し部屋は見付からず、ジュカに休憩所を作ってもらった。

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