18 仲良しパーティですね、悪徳なのに

「こっちです」


「何にもないように見える」


 ダンジョンの"何にもなく誰もいないところ"で、認証キーである魔法を使う。魔法が使えないタイプの魔王軍軍人は、認証キーが物理的なものを支給されている。

 自由に人間界に出入りするためにね。


「誰にも見られないように入る必要がありますので」


 魔界が儲かるシステムなのだよ、マノンくん。


 認証キーを使うと、ダンジョンシステムが感知するようになっている。その時に開くタッチパネルへ、利用する人数を打ち込む。するとその人数に対応した秘密の部屋へ、入れる扉が開くようになってるんだ。


 中には申請した人数が休憩できるような部屋があるよ。

 モニタにタッチパネルのキーボード。そこに検索アプリや、ダンジョンマスターへのアイテム申請アプリみたいなのも入ってる。


 ダンジョンで急にエンカウントすることがあるでしょ?

 あれって誰かが検索して戦いに行ったからだよ。

 魔王軍のダンジョンシステムでは。


 女の子のパーティがいつもゴブリンに襲われる理由も、この機能を使った襲撃だからだと思われる。

 ゴブリンはメスなら何でもいいからな。サイズがある程度合えば。


 変装してるから襲ってくる可能性がある。

 まあその場合は経験値にするしかないかな。

 面倒だけど。


 そんな説明をしたらポカーンとした表情で固まってしまったマノン。再起動したかと思えば……。


「え? じゃあマジックアイテムとかも取り放題!?」


 わりと欲にまみれてるアイデアを思い付いたみたいだ。


「する必要がないです。ダンジョンマスターに、私たちは思い通りのアイテムを頼めますので。素材は必要ですが」


「ズルイ! 魔王軍ズルイ!」


 世の中ってさ、そういうものだよね。そんなことを言いながら、検索ワードを書き込んでサーチする。今探すのは4人パーティ3つなので12人。

 なので物凄く簡単に発見できた。


「8層、オークの森を狩場として独占しているようですね」


「ホントに簡単に見つかった……」


「では8層に向かいます」


「この部屋で?」


「はい」


 スイッチをポチー。

 秘密の部屋自体がエレベーターで休憩所。

 魔王軍を残したいと思ってる僕は正しいと確信しているのです。


「ズルすぎる」


「ウチの魔王サマが、あんまりアグレッシブな魔王じゃなくて良かったでしょう?」


 他所の魔王がこの王国にチョッカイ出していることを伝えた。そして気付かないうちに、その陰謀を僕たちが潰していたことも教えたら驚いてた。


「今回の悪徳貴族も他所の魔王軍の仕業でしたからね」


 だから王国民自体が強くならないと滅びそうなんだよな。


「先生がいたら、だいたい何でも解決するんじゃない? ほら、今回のも解決するでしょ」


「所詮は個人ですからね」


 同時展開されて色んなとこを攻められると対処ができないよ。

 もう一人の自分ワンモアを使っても4ヶ所までだし、マノン入れても5ヶ所。

 軍隊相手は無理だ。


「マノンと一緒に魔王狩りをすればどうにかなりますけど」


「魔王……狩り…………先生!? ソレ、オカシクナイッ?」


 そんなの絶対忙しい。

 なのでそれは最後の手段かな?

 マノンのステが、まだ追い付いてないし。


「私たちの目的はレガリアを探し出すことですので」


「ソダネ」


 だから王国民には強くなってもらって、ある程度は他所の魔王軍を削ってもらわないと。

 魔王へのラストアタックはマノンにやってもらうけどな!


 だって"勇者の力"が必要だし?

 レイドボスのLAボーナスはオイシイはずだし?


「マノンには強くなってもらいます」


「はーい。ね、先生、ケーキもう1個欲しい」


 悪徳貴族退治に気負いもないみたいだな。

 これならマノンに任せても大丈夫だろう。

 モニタで見てる感じ、相手パーティの実力も問題にはなりそうにないレベル。


「狩場を独占してるわりに、強くなさそうだね。先生」


 マノンも同じことを思ってた。


「楽な戦闘を繰り返してたんでしょう」


 いや、強くなるってことを目的にしてないなら正解なのか。効率よく稼ぐムーブってことで。

 釣り出してボコるを繰り返している。


「作戦は?」


「殲滅なので好きにしていいですよ」


「了解っ!」


 じゃ、戦闘開始だ。

 魔王軍のダンジョンシステムを使って現れる僕たちは、オークの森に湧くレアモンスターのエンカウントみたいなもの。


 ダンジョンって怖いね。


 見張り役からお片付けするつもりのようで、マノンが二刀を抜き放ちながら突撃していく。

 上下平行に構えた剣の間に、稲妻が駆け巡る。


「雷牙──突ッ!」


「ギャアアアアッ!?」


 突き刺された男を起点に、周囲のパーティメンバーへも稲妻が連鎖。雷属性はチェーン系も優秀だ。

 動きを止めたDランク悪徳パーティの残り3人。


 僕が首を撥ねて終了。


「静に仕留めたほうが、後々楽になりますよ?」


「えぇ? 作戦なしで好きにって言ってたのに」


「多少楽ってことです。ほら、様子を見に全員寄ってきました。仲良しパーティですね、悪徳なのに」

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