13 自分の都合に合えば他人の時間は考慮しなくて良い、とかいうシステム

 ランクアップ試験の合格証明書を受付に提出。

 僕たちは無事にランクアップを果たした。

 Fスタートではなく、予定通りのCランクに。


 パーティ名はリーリウムで登録した。ゲームの時はリーリウムリリーにしてたんだけど、現実世界になっちゃったからな。

 ラテン語+英語で"ゆりゆり"なんて付けてる場合じゃない、かなって。


 なので人名っぽくないほうのリーリウムだけ使うことにした。

 綺麗な響きの言葉だし、良いんじゃないかと。


「なにか意味がある言葉なの?」


「お花の百合です。マノンのイメージをそのまま付けました。純粋や無垢という意味も入っています」


「え~」


 とか言いながらクネクネ照れてるマノンがカワイイ。


「ンッ!?」


「先生?」


「今日のところはダンジョンに行かず帰宅しましょう」


「ムムーッ? 楽しみにしてたのに!」


「重大な要件があります」


 冒険者カードにパーティとして登録された時か?

 僕の視界にシステムログが流れた。マノンのスキルツリー解放って。メニュー画面から操作可能になるようだ。


「お待たせしました。こちらがお2人のカードになります。紛失──」


 説明を聞くのはマノンに任せて、僕はメニュー画面を開く。ざっと見た感じ、僕のとは少し違って、スキルツリーでスキルの新規獲得はできないみたいだ。

 マノンが自力で獲得したものを強化って感じか。


 じっくり相談しないとな。


「ねえねえ先生。ギルドにお金預けて、カードで買い物できるんだって!」


「便利ですし入れておきましょうか」


 素材の買取カウンターに移動して、インベントリから魔物素材をアレコレ出していく。村からここまでの移動時に狩ったものだけ。ダンジョン産のは魔王軍で処理したほうがお得だからな。


「お肉はこっちで使いますから残しておくように」


「分かってるー。骨は?」


「骨は私の分だけで大丈夫でしょう」


 出汁を取るのは時間が掛かるからな。冒険者稼業をするなら、頻繁に作れないと思うし。

 お金をカードに入れてもらい、振り向く。


「さて、アナタ方だけ他とは違いましたね」


 僕たちを侮ってニヤつきながら見てた奴らが寄って来てる。


「へぇ? 分かってんじゃん?」


 ギルドに入った時から観察されていた。

 実力を測ろうとしている目。

 性的な目で欲望むき出しの目。


 そしてコイツらだけ、僕たちをカモにしようとしている目をしていた。

 僕も観察してたから分かってたんだけど、バカなんだなあ。そういう悪事を働くなら、ギルドの外でだろ? 普通は。


「なら分かるよな? そのマジックバック、どこで手に入れた?」


「新人が持ってるもんじゃねえ。商人でも騙したか?」


「俺たちなら庇ってやれるぜ? 仲間になれよ」


 マノンのスキルツリーが現れて気分が良かったってのにさあ。

 自分の都合に合えば他人の時間は考慮しなくて良い、とかいうシステムで動くヤツらって嫌いだ。


 帰ってマノンとのお喋りを予定してたのに、邪魔しやがりますわね?

 おーん?

 やんのかおぉん?


「愚か。凄く愚かです。高級品を手に入れる手段は色々あります。

 暴力、経済力、権力。アナタ方が言うように詐欺。

 どれを使ったとしても、アナタ方より上だから私たちは所持しているのです」


「て、てめぇっ」


 殴りかかってくるチンピラ団。


「ちなみに私の場合は暴力です」


 背後に回って首筋に短剣をピターンピターンしてあげた。

 もう一人の自分ワンモアを使って3人全員に。


「せ、先生、やりすぎでわっ?」


「これくらい脅せば、余計なちょっかいを出されなくなりますので、マノンも覚えておくように」


「先生!?」


「外で襲われた場合は、容赦する必要もありません。どうとでもなります」


 下手に残すと他の人を襲ったりするだろうしな。

 野盗未満のコイツら、どうしよう?

 冒険者たちを見ると、目をそらされた。

 受付嬢を見てみると、目をそらされた。


「余罪もありそうですが、ギルドは不干渉のままですかね?」


「私の仕事は憲兵に連絡まで、ですので」


 うーん、それもそうか。

 つまり憲兵が来るまで待ってる必要が……。


「ねえ先生、未遂なのにそこまでする必要があるの?」


「私たちは平気でしたが、他の人を襲う可能性も高いですからね」


 野盗にクラスチェンジだってあり得るしな。


「なるほどぉ」


 そして今まで誰も何もしていなかったっていうのは──コイツらがここの最強っていう可能性が……?


 シナリオ開始直後だから?

 王都の冒険者もレベルが低い?

 でもシナリオがスタートするマノンの覚醒は1年前だ。


 他の魔王からも、ちょっかいはなかったしなあ。

 うーん、シナリオはどの程度、現実に反映されるんだろう。


 ラストレガリアはサンドボックス系のRPG。

 だからシナリオはガッツリ系じゃない。複雑じゃないなら僕でもなんとかできるかもだし、好都合かもしれない。


 でも変わっていくみたいだし油断はできないな。

 とりあえず強くなれば死亡フラグが立ち難いと思う。

 修行だな、修業。


 そして王国民も修行が足りません。励むのです。その内に魔王が攻めてくるんだからさ。

 今のままじゃ魔王軍に蹂躙される未来が見えるよ。


 ンー……?

 マノンのパーティーメンバー候補、魔王軍絶対殺すマンルートから外したのって、もしかして悪手だったり?


 フラグがないから弱いままなのか?

 フラグ回避したつもりで、僕がフラグを立ててた可能性が出てるんだけど!?


 さすがに僕らだけじゃムリか?

 いや、イケるか?

 ステータス的には魔王撃破の頃より、すでに高い数値。


 なによりもマノンのスキルツリーも生えたし。

 早く帰ってマノンに伝えたいなあ。


「早く来ませんかね? 憲兵さん」


「ね。暇だよ」


「えー、ネムさん、マノンさん。彼らの主は厄介ですので、お気を付けください」


 さらに邪魔するキャラが出ると?

 そしてソイツが強いんだな?

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