15 クレープとケーキ、どっちにするか迷ってる時ぐらい一生懸命だから、大事なことって分かってるようで安心。

 つまり勇者の使命なんてないから、早く一緒にレガリア探ししよう。魔王軍仕様のダンジョンでも、レガリアのヒントは検索はできなかったし。


 たぶんランダムな場所にヒントが出現するっていうシステムのせいだろうな。


「さてマノン。大事な話です」


「えぇ~? 今までの話も大事だったような」


 聞いて驚くがいいさ。


「マノン待望のスキルツリーが解放されました」


「ホント? やったーっ!」


 そんなわけでさっそく食後のデザートを食べながら、マノンの要望を聞いていこうと思う。僕がアレコレ取りなさいって言うよりも、自分で動きやすいようにパッシブスキルを組むほうがいいだろうから。


 改めてマノンのスキルツリーを確認。やはり彼女自身が獲得したものだけが、表示されている。ツリーでのスキル新規獲得はできないようだ。

 そして素のステータス値も、僕と違って加算できない。


 それでもステータスにバフが掛けられるから、強くなるよ。


「ステータス、マノンの筋力や器用さなどを強化するのか──」


 雷と聖の属性を強化するのか。

 それとも耐性?

 取得しているアクティブスキルの強化?


「できること、いっぱいあるね!」


「迷うところではありますが、楽しいところでもあります」


 振り直しもできるから、気になるところを強化していけばいいとマノンには伝えた。ただ現実だと上げたものを下げるというのは、倦怠感が激しいというデメリットがあった。


 僕は紙に強化可能なものを書き出してマノンに渡す。


--------------------------------------------------------------------------

 ステータス

  HP MP STR VIT INT AGI DEX


 属性

  雷 聖


 耐性

  殴打 斬撃 刺突 雷 聖 火 光 闇


 アクティブスキル

  吹き飛ばし パリィ

  アサルト(突撃) チャージ(溜め攻撃)

  アクションヒンダー(行動阻害)技の出を潰す感じの近接スキル

  オーラ(属性をまとう)


 パッシブスキル

  両手利き ノックバック

  アジテーション(これは伸ばさないで欲しい)


 スキルポイント 100pt

 スキルツリー+1ごとに5pt消費

--------------------------------------------------------------------------


 たぶん動きの練習も必要だし、出発は2日後にしたんだよね。

 ステータス値はツリーを進めていくと、強化されるパーセンテージが加算されていく仕様だ。+1+3+5+7+9%みたいに合計で+25%まで。


 アジテーションはリセットしてポイントにしたいところ。しかしマノンの取ったスキルを、僕が消去することはできなかった。

 ギルドの時みたいな、妙な扇動をしなきゃいいけど……。


「先生、ステータスのところの意味がよく分かんないよ? HP? MP?」


 それもそうか。ゲーム用語だし。

 マノンに説明して、自分の動きに合うステータスを伸ばせば良いと教える。


「そっかそっか。このステータスが上がるのは、根本的に私の能力がアップするってことなんだね」


「そうなります」


 ウーンウーン言いながら一生懸命考えてる。

 クレープとケーキ、どっちにするか迷ってる時ぐらい一生懸命だから、大事なことって分かってるようで安心。


「決めたっ。AGIを+5%のとこまで。STRとDEXを+3%まで。HP、VIT、MPを+1%にする。それから──」


 両手利きとパリィが3段階。アクションヒンダーを1段階上げると、マノンは宣言した。なかなか良い選択だと思う。

 僕好みだ。


 というか僕好みだから、僕の動きがそんな感じだし……それを見てたマノンがマネしたのだろうか?

 憧れであってくれたら、先生は嬉しく思いますっ。


「ではスキルツリーを進めていきますが、一気に上げていくので万能感が出てしまいます。調子に乗らないように」


「分かったよ先生! 早く早くー」


 ステータス伸びるとさ、ホント何でもできる気になるからなあ。僕は最初、それで失敗してしまったよ。僕自身が生戦闘したこともないのに、ネムの記憶でできるって勘違いしちゃったのだ。


「調子に乗ったらコチョコチョの刑です」


「分かったってばっ!」


 ホントかよ?

 ステ強化したところで、まだ僕のほうが上だからね?

 反撃なんてできないぞ?


 今までの仕返しをしてやろう。

 っていう魂胆が丸見えの表情をしたマノン。


「ス、スゴイ……これが先生の見てる世界なの?」


 すまんね、マノン。

 僕はもう、ステアップが一歩先の場所に突入してるから、+2+4+6+8+10%で+30%までのルートです。AGIは55%上がってるんだ。


「ゆるちて! ゆるちてぇぇえあはははきゃきゃきゃァヒィ──」


「約束通りコチョコチョの刑です」


 エルフだし暗殺者だし、元からAGIが高かったんだよね。

 なりたて覚醒勇者なんかには負けてあげないのだ。


「そういえば悪徳貴族退治のついでにでも、マノンの髪の毛で作成を頼んだマジックアイテムを受け取りに行きましょうかね」


「ぅぁぃ」


 そろそろ出来上がる予定のはずだ。

 出来てなかったら文句言ってオマケを付けてもらおう。


 ダンジョンマスターが勇者の研究がしたいとかで、制作には時間が掛かってたんだよ。

 僕はさっさとアイテムが欲しかったのに。


 勇者の髪の指輪2個

  雷 聖 INT MP +5%

  怯え耐性 +5%


 最終確認の時には、そんな性能になると聞いている。

 良い仕事してますねぇ、のヤツだね。


「マノンはどうします? 魔界に行くなら変装させますが」


「あー、チョット興味はある、かな? 行って良い?」


「ではダークエルフになってもらいましょう」


 エルフじゃないのはたった一つの理由。

 おっぱいがおっきいから。

 "エルフがスレンダー"なのも様式美って学んでいる。


 貧乳なのではない。

 スレンダーなのである。


 外見的にサキュバスでも良いかなって気もするんだけど、マノンは天真爛漫系のお転婆元気娘だからな。

 エロさがないのでダークエルフにするのは、やむを得ない選択ってことだ。


「悪徳貴族退治の時も変装しておいたほうが都合が良いですね」


「りょーかーい。蛮族っぽくならないんだったら文句はないよ!」


「今回の変装は魔王軍っぽくなってもらいます。立場は今と同じで弟子ですかね」


「うん、それが楽じゃない?」


「では明日にでも変装の材料を揃えておきます。マノンは身体能力のチェックをしたほうが良いでしょう」


「庭が広いから、出掛けなくても大丈夫そうだよ」


 何かと当たり物件だったかもしれないな。

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