34 もしかして魔王軍って、最高なのでは?

 今回のダンジョン探索は深くまで行くことだ。

 マップも稼げるルートを書くくらいかな。

 孤島のダンジョンは50層まであるので、僕たちが活動する場になるのは40層以降。


「まずは22層に向かいます」


「それが先生の秘策のヤツ?」


「ええ。転移トラップを使った移動で深くまで潜ります」


「わざと罠にかかるの!?」


 そーなんですー。

 22層から34へピョーン。34から45にピョーン。

 そこからは階段を使って40から50層の間を、満足するまでグルグル回って稼ぐ方法だ。


「問題があるとしたら22層までの体力ですね」


「走る気だ……」


「もちろん風の精霊ナギの力も使います」


 移動の補助に精霊の力を使ってもらう。

 ゲームでは体力回復のアイテムを使ってたんだけど、現実だと現実的じゃあないっていうことに今気付いた。


 大きな生肉を食べながら走り続けるなんて……現実じゃあムリだよ……。

 どんな地獄だよ……ソレ……。

 せめて調理したお肉にして欲しい。


 僕はマノンでプレイしていたので、当然マノンが生肉を貪りながら走ってたってこと。

 現実でそんなことをさせるわけにはいかないのだ。


 とはいえ最近はメリハリを付けて冒険してたし?

 僕たちの気力は十分だ。

 精霊たちの補助があれば、現実だって走り抜けるはず。


「お試しで今日はやってみましょう」


「分かった。何度か試せば丁度良いところを見付けられるよね」


 途中の魔物は基本的にスルーで。

 接敵した場合はアサルト系スキルで突撃して、そのまま通り過ぎる。

 倒したとしても素材の確保はしない予定だ。


「時間の無駄です」


「もったいないなあ」


「深い階層で稼ぐというのは、そういうことですよ」


 浅い階層の魔物素材は今更いらないからな。装備のバージョンアップ素材は、ダンジョン下層で集めるものだ。

 効率良く効果的に──だね。


「今日のペースはどうですか?」


「平気。でもこれ以上だと、やる気がなくなるかも」


「私もそんな感じですね」


 1日で来れるのは17層までか。

 テレポーターに辿り着けないなら、そこまで急ぐこともないかな。っていうことは、本格的に稼ぐタイミングになるのは3日目からってことだ。


「丁度良いのは1日目が14層、2日目で34層に行くペースでしょうか」


 45層で休憩するよりかは、34層の45層行きトラップ部屋で休憩するほうが良い。

 浅い階層のほうが安全だし。

 あんまり関係ない気もするけど、これは念のためかな。


 現実世界じゃ休憩はもちろん、睡眠も必要だからね。ゲームだと1日で移動できてたけど、こればっかりはどうしようもないな。ゲームパッドのスティックを倒すだけで移動できるわけでもないし、ダッシュボタンもない。


「つくづく実感しますね。エレベーターが便利って」


「ねっ」


「明日は少しゆっくり進みましょう」


「はーい」


 急げば明日には稼げるけど焦っても仕方ない。

 今日はここまでだ。

 やる気ってのは大事だと思う。


「ベニちゃんオススメの素材ってある?」


「きゅー」


 休息のための快適施設を精霊たちと構築していたら、マノンがそんなことを質問していた。

 マノン、それは装備の方向性が決まらないと決められないよ……。



 ベニもそう思っているようで、どんな武器が良いのか聞き返してる。勇者っていう存在が面白いのか、結構一緒にいるね。


 防具のほうは素材も大体は決まってる。

 耐魔法装備だし、悪魔系の素材を集めたら良い。


 耐魔法装備用の素材集めに、魔法戦してくる相手を狩るっていうことになってんだけど……まあ、これは仕方ないことか。


 本来なら魔物からのドロップ装備とか、宝箱からの獲得で徐々にバージョンアップするものだし。僕が魔王軍にいるから、そこをすっ飛ばしてダンジョンマスターに作ってもらえる。


 もしかして魔王軍って、最高なのでは?


「きゅー」


「だよね? 先生が無茶苦茶なんだと私も思うよ?」


 オメェが強すぎなんだよ、アホが。

 みたいなことを言われた。


「そんなバカな……」


 弱い時からベニに作ってもらってたんですけど?

 チマチマ素材集めてさ。

 納得はできないが……まあ良いとしよう。


「明後日は悪魔系の眼球と心臓と脊髄を集めることにします」


「先生コワイッ!? そういうとこだよ?」


「きゅー」


「エェッ、それは当たり前なの!?」


 こわぁ、魔王軍こわぁとか言われた。

 仕方ないじゃん。

 だってそれが素材なんだから。


「マノンも装備にこだわり始めたら、こうなります」


「ホントかなあ」


 なるね。

 絶対ね。

 絶対なんて絶対あり得ないってくらいの絶対だよ。


「そもそもマノンの今の装備だって"そういう素材"ですよ?」


「し、知らなかった」


「マノンはおそらく剣にこだわり始めると思います」


「…………」


 ほら、もう自信がないじゃん。

 切れ味アップにはドラゴン系の牙とか爪が効果高いよ。

 そう教えたら、もう狩りの対象にしてるじゃん。

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