エピローグ

「お、似合ってんじゃねえか、ライバート」


 僕にそう言って声をかけてくれたのは、にこにこの笑顔を浮かべたナウスさんだった。

 それに僕は照れ笑いを浮かべながら、告げる。


「あ、ありがとうございます。そ、その改めてよろしくお願いします、ナウス先輩」


「……っ! おう、任せろ! 俺に何でも聞け! 全部教えてやる!」


 その瞬間、ただでさえにこにことしていたナウスさんの顔が溶ける。

 その頭に小気味いい音とともに書類の束が振り落とされたのは、次の瞬間だった。


「いって! 何すんだよ、マリア!」


「教えるも何も、ライバートは私達の上司に当たるのに何言ってるんだか」


「いいだろ! かわいい弟分に先輩と呼ばれて張り切って何が悪い!」


「そんなこと言ってるから、いつまでたっても後輩に尊敬されないのよ」


「何を……!」


 マリアさんとナウスさんの軽い言い合いはいつもの事だと知りながら少し困惑する僕。

 ナウスさんを無視したマリアさんはそんな僕に向き合って、にっこりと笑う。


「こんな脳筋より、私が仕事を教えた方が効率いいと思わない?」


「え、え?」


「それはもう、手取り足取り教えて……」


「間に合ってるので大丈夫よ」


 そんな僕を後ろから伸びた手が抱きしめたのは次の瞬間だった。


「サーシャさん?」


 よく思いでのある感覚にそう声をかけると、僕をのぞき込んだ見覚えのある顔がにっこりと笑う。


「ずるいわよ、サーシャ! 私も癒しがほしいんですけど!」


「それは俺もだよ」


 そう言ってすねる二人に、勝ち誇ったようにサーシャさんが勝ち誇ったように告げる。


「あら残念、私は正式なライバートの先輩なので」


 そう言って、僕は離したサーシャさんは僕へと手を伸ばす。


「それじゃ、行こっか」


 その手を見ながら、僕はふと思う。

 この手に助けられてから、一体どれほど想像もしない事が起きてきただろうか、と。

 そしておそらく、その想像もしない事態はこれから先もどんどん起着ていく違いない。


「はい、サーシャさん」


 今の僕は、それが楽しみでしかたなかった。


 サーシャさんの手を取った僕達はそのままギルドへと歩いていく。


「そういえば、ライバート!」


「ナウスさん?」


「改めて一級ギルド職員おめでとうな!」


「……おめでとう」


 純粋に祝福を込めたナウスさんの声と、少しすねたマリアさんの祝福の言葉。

 それに僕は笑顔で笑う。


「ありがとうございます……!」


 その笑顔に、もうかげりはなかった。




 ◇◇◇


 こちらでこの作品は完結となります。

 先の構想もあるのでまた続きを書くかもしれないですが、書きたかった所までかけたので満足してます!

 もしまた続きを書き始めた際はよろしくお願いいたします!

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『穀潰し』と追い出された僕がギルドでは優秀だった件 陰茸 @read-book-563

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