【9】
「ママらしいよね」
「てか、よく知ってるね」
「ママに訊いたんだもん。小三の頃だったかな」
「小三相手に〝合コン〟ってワードを出すの面白いね」
「ホントだよね。私、解んなかったから訊いたんだもん。〝合コンってなぁに?〟って」
「で、ママは何て」
「〝男の人と女の人が何人かずつで一緒にご飯食べながら、男の人は気に入った女の人とお付き合い出来る様にいっぱいお喋りして、女の人はそれを聞いてあげる集まりの事〟って」
「えっ、それ何か違くない? ニュアンス的に」
「違うよね。私も何年かしてからじわじわとそう思ったの」
「ママは合コンをそんな風に捉えてたんだね」
「そうみたいだね。でね、パパはママに一目惚れして、帰り道で告白してフラれたんだって」
「初日に告白したの? そりゃフラれるでしょ」
「だよね。いくら合コンでも出逢った日はあり得ないよね」
「パパらしいよね」
「うん、パパらしい。でね、毎晩ママに電話掛けてたんだって」
「うわ、迷惑だな」
「で、ママのバイト先のコンビニにしょっちゅう来てたんだって」
「ほぼストーカーじゃん」
「犯罪すれすれだよね」
「でもホント、そうなっちゃうのも解るよね、あんな美人だったら」
「ホントそうだよね。結婚式のビデオ見せてる時のパパ、いっつも誇らしげな顔してたもんね」
「そうそう、すごい嬉しそうにしてるよね」
「ママが芸能界入りしてないの勿体ないよね。女優さんになれば良かったのに」
「前、ママに台本読み付き合ってもらった事があるんだけどさぁ、ママの演技が酷くてすぐやめた」
「あはっ、ウケる。確かにママ、演技下手そう」
「何かママ、芝居していくうちに段々熱が入っちゃってさぁ」
「あはっ、熱が入ってるのに演技が下手なんだ」
「そうなの。学芸会みたいなの」
「あはっ、すごい想像出来る」
「何か、妙なミュージカル感出してくるし」
「鼻につくねぇ、それは」
「ママが役者モードになってんのが、気恥ずかしくて」
「解るぅ。前、パとパ台本読みやった事があるんだけど、パパの一言目でもう嫌だなってなった」
「へぇ、パパと?」
「そう。私が台本読んでたら〝台本読み付き合ってやる〟ってパパが。〝いいよ〟って云ってんのに〝いいからいいから〟って、ずっと続けんの」
「あはっ、ウケる」
「で、しまいには台本読んで泣き出したの」
「あはっ、パパらしいね」
「もう、ドン引きだよ。涙目になるってレベルじゃなくて本気でがっつり泣くんだもん」
「それは嫌だね」
「全然進まないからさぁ、台本取り上げた」
「パパは感受性のバケモノだもんね」
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