【3】

 「そう云えばグッチって誰かにコクってフラれたよな。誰だっけ」

 「藤」


 「ああ、そうだ。そうだった。三回ぐらい挑んだんだよな」

 「いや、七回だよ、七回」


 「七回? ヤバいな」

 「週一ペースでコクったらしい」


 「週一? ヤバいな。もっと間隔開けろよな。一週間で翻らねぇだろ」

 「ってか、あいつ結局、芸人になるのはやめたのか」


 「ああ、バヤシとよく昼休みとか学校祭で漫才とかコントやってたよな」

 「トータルで一笑いも起こしてなかったけどな」


 「壊滅的につまんなかったもんな」

 「ギャグとかテンションとか変顔に頼り過ぎだし、ツッコミも狙ってる感が尋常じゃない割につまんねぇし、そもそもコンビ名で滑ってたもんな」


 「何て名前だっけ。長くてクソダサい名前だったよな。何だっけ」

 「ポニーテールアメリカンドッグ」


 「ああ、そうだった。お互いの好きな物を掛け合わせたんだよな」

 「そうそう。髪型か食べ物かで統一しろよな」


 「あいつ等は芸人にならなくて正解だよな」

 「あれ、お前、聞いてなかったけ。バヤシは今、芸人やってるらしいぞ」


 「なんで手応え感じてんだよ。無理だろ、あれじゃ」

 「一人でやってて、劇場でネタやってるけど全然ウケてないらしい」


 「だろうな。どんなネタやってんだろうな」

 「キャラに扮して漫談してるらしいけど、迷走してるらしいぞ。きゅうりが嫌いなレスリング選手の河童とか、関西弁で話す宇宙人の妊婦とか、一〇〇〇年後の未来から来た落ち武者とか」


 「未来から来た落ち武者ってなんだよ、おかしいだろ。なんで未来に武者がいるんだよ。てか、どれも一人でやるネタじゃないだろ。ツッコミがいるだろ、絶対」

 「お笑いの大会も毎回一回戦で敗退してるらしいし、オーディションも落ちまくってるらしい」


 「何て芸名でやってんだろうな」

 「普通に中林渉だってよ」


 「本名でやる芸風じゃねぇだろ。ふざけた芸名つけろよ、そんな芸風なら」

 「そう云えばあいつもフラれまくってたらしいな」


 「誰に」

 「神崎」


 「へぇー。知らなかったな」

 「靴箱に便箋七枚分もの長文のラブレター入れたらしい」


 「七枚って。ヤバいな。何をそんな書く事があんだよ」

 「で、数日後に〝ごめんなさい〟って文字だけ返って来たらしい」


 「ふっ。便箋七枚が六文字で返って来たのかよ」

 「そう云えばお前、これ知ってるか。〝タスクのたすき〟事件」


 「〝タスクのたすき〟ってあれだろ、前にやってた駅伝のドラマだろ?」

 「そう」


 「あの、鎌野統司が出てた」

 「そうそう」


 「〝アンカーだけがテープを切るんじゃない。テープは、ランナー皆で切るんだ〟ってやつだろ」


 「そうそうそう」

 「で、何だよ、〝タスクのたすき〟事件って」


 「あいつがそれの最終回の内容をまだ観てないマッツに云っちゃってマッツが滅茶苦茶ブチギレたって話」

 「そらキレるわな」


 「そしたらあいつが、〝いや、あれは結末解った上で観ても面白いから〟って必死に宥めてた」

 「そういう問題じゃないよな」


 「てか、俺観てたけど、あれってあんまそういうタイプのドラマじゃないしな」

 「そう云えばマッツもコクってフラれたんだったよな。誰にフラれたんだっけ」


 「川原」

 「ああ、そうだった。川原だったな。すごい長い期間放置された挙句にフラれたんだったよな。一ヶ月っつってたけ」


 「三ヶ月だよ、三ヶ月」

 「三ヶ月ってヤバいな。そんなに悩むんなら一回付き合ってみればいいのにな」


 「マッツが不憫だよな。三ヶ月も焦らされて」

 「マッツは相変わらずダーヤスと底辺YouTuberやってんのか」


 「俺が此処に来るより随分前にすっかり更新されなくなったらしいから、もうやめたんじゃないのか。鳴かず飛ばずのまま」

 「身の毛もよだつつまんなさだったもんな、あいつ等の動画。モノマネやら一発ギャグやら上げてたけど」

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