【4】

 「英昭はどうなんだよ」

 「ヒデ君も元気だよ」


 「相変わらずアニオタやってんのか」

 「相変わらずオタってるねぇ、ヒデ君は。毎日毎日アニメの話聞かされてるよ」


 「俺がいなくなってからお前がアニメ話聞かされ役の後釜に任命されたわけか」

 「そう。で、今一番ハマってるのが〝ピポピポフェアリー〟ってアニメなんだって。ララとミミっていう妖精の姉妹が主人公なんだけどさ、その二人がまた可愛いわけよ。ララはしっかり者でちょっと気分屋なお姉さんで、ホワイトチョコが好き。ミミは泣き虫で寂しがり屋の妹でマシュマロが好き。で、二人はピポピポ村っていう妖精の村に住んでて、村長が二人のお父さんのジジ。で、そのジジ村長が高熱で倒れて、二人でダワ草っていう伝説の薬草を求めて旅に出る回がもう、神回なわけっ! あと、〝メゾンド・アニマル〟っていうのがあってさぁ、これはちっちゃいボロアパートに住んでる動物達の話なの。で、一〇一号室がサルのオダさん。一〇二号室がオウムのトリヤマさん。二〇一号室がキツネのキシモトさん。二〇二号室がゴリラのソラチさん。で、管理人がカメのアキモトさん。毎回主人公がその五人の中で入れ替わってさぁ、ブラックユーモアだったり時事ネタを取り入れたりでギャグ要素が多いんだけど、たまにほっこり回の時もあって、これがまた泣けるんだよねぇ。油断してると泣かせにくるんだよねぇ。あと、〝主婦戦士 ムソジーンⅩ〟っていうのがあってさぁ、スーパーで働く傍ら怪獣を倒す五人の主婦の話で、これが滅茶苦茶面白いんだよねぇ。レッドが韓流大好きのイシダさん。ブルーが腰のヘルニア持ちのタムラさん。グリーンが唯一のバツイチのハシモトさん。イエローがゴシップ担当のマエダさん。ピンクがメタボ予備軍のタケヤマさん。で、五人の司令官兼スーパーの店長が恐妻家のマツモトさん。これががっつりギャグでさぁ、毎回笑えるんだよねぇ」


 「いや、お前もハマってんじゃねぇか。完全に染まってんじゃねぇか。大体何なんだよ、〝ムソジーンⅩ〟って。ちょっと〝ムソジーンⅩ〟が気になってきたじゃねぇか。ところで、政伸はどうなんだよ。相変わらずの女癖なのか」

 「マサ君も相変わらずだよ。相変わらず滞りなくほぼ二、三ヶ月周期で彼女変えてるらしいよ」


 「あいつ、俺の一個下だよな。まだそんな事してんのかよ。いい加減、相手定めろよな」

 「ついこないだまで、うどんとトマトとビールだけで生きてる人と付き合ってたんだって」


 「滅茶苦茶トリッキーな食生活だな。体内、グルテンとリコピンとプリン体まみれじゃねぇか」

 「で、その前は、分度器マニアの人と付き合ってたんだって。その人、何百個も分度器持ってたらしいよ」


 「滅茶苦茶トリッキーな趣味だな。分度器マニアなんてカテゴリーがあったのかよ。何で数ある文房具の中でも分度器に着目したんだよ。分度器の何に魅せられたんだよ。絶対話が合う奴いないだろ。大体、分度器なんて集めてどうすんだよ。文房具の中でコンパスと一、二を争う実用性のなさじゃねぇか」

 「で、その前は背中にがっつり二匹の龍の入れ墨した、滅茶苦茶暑がりな人」


 「いや、それさっきの女じゃねぇか。政伸と別れて朋靖と付き合ってんじゃねぇか」

 「あっ、ホントだ。二人は知ってんのかな。たまたまだったらすごいけどな」


 「どっちにしろヤバいな」

 「ヤバいね」


 「政伸の元カノのパンチの強さより朋靖の元カノが政伸の元カノだった衝撃の方が上回ってんじゃねぇか」

 「確かに。三人の衝撃が一気に霞んだよね」


 「一応、あいつ等には黙っといた方がいいな」

 「うん。そうだね」

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