【5】
「へぇー、知らなかったぁ。何だか将斗君に申し訳ないわ」
「あとあいつ、寿司も食えないしな」
「えっ、噓っ。お寿司食べられないの?」
「マジで。赤の他人が素手で握ったものなんか食いたくないっつってた」
「損してるよ、あんな美味しいものを食べないなんて。ところで、将斗君の潔癖症は今でも進行してんのかな?」
「いや、もう最終形態に入ったって前に云ってた」
「あはっ、最終形態って」
「あれ以上進行してないといいけどな。暫く会ってないから心配だよ」
「てか、凌汰君と将斗君って中学からだったっけ?」
「うん、中学から」
「高校からって云ってなかったっけ?」
「中学からだって」
「三人が高校からなんだっけ?」
「いや、晃士郎が高校で知り合って、二大巨頭が大学」
「あはっ、二大巨頭って。二人共背高いもんね」
「そう云えば、ホテルで将斗が晃士郎と二大巨頭にブチギレれた話、教えたっけ?」
「えっ、何それ、知らなぁい」
「大学卒業記念の旅行でホテルの部屋に入るやいなや、晃士郎がベッドにダイブしたわけ」
「確かにダイブしたくなるよね」
「で、二大巨頭もそれに倣ったわけ」
「あはっ、見たらやりたくなったんだ?」
「そう、で、全部のベッドにダイブして、将斗がブチギレた」
「あちゃー、それも、潔癖だから?」
「うん、外の菌が纏わりついた服でベッドに乗るなっ! って、キレてた」
「全部のベッドにやっちゃったのかぁ」
「そうそう、自分のベッドだけにしろよっ! っつってた」
「ホントだよね。三人にやられたら未然に防げないしね」
「で、ベッドに除菌スプレーかけまくってた」
「やっぱりその時も持って来てたんだ、除菌スプレー」
「常備してるからな、あいつ」
「ホント大変だね、潔癖症の人って」
「狂った様にスプレーかけまくって、ベッドびしょ濡れになってたからな」
「あはっ、ウケる」
「で、将斗がシャワー浴びてる時に晃士郎が、こっそりあいつのベッドにダイブしてた」
「あっ、悪い」
「で、俺達が温泉から部屋に帰ったら、あいつがベッドでスマホ弄ってたから必死に笑い堪えてたわけ」
「ホント悪いね。てか、皆で一緒にホテルの温泉入ったんじゃないの?」
「いや、温泉は不特定多数の人が素足で歩き回ってるし、ホテルの部屋のシャワー使う人はほぼいないだろうって事で、あいつは部屋のシャワー使った」
「うわ、出たぁ」
「呆れるよな」
「うん、ホント大変そうだね、潔癖症の人って」
「あっ、そうだ、その日さぁ、晃士郎が従業員に一目惚れして、連絡先訊いたけど断られてたよ」
「えっ、そんな事したの? 果敢だね」
「で、その後、芋焼酎飲みまくって奇声発してたわけ」
「一目見ただけでよくそんな自暴自棄になれるぐらい好きになれるね」
「まぁ、あいつ飲めないからな、ショックでああなってたのか、あれがあいつの酒癖なのか解らん」
「どっちみちヤバいね」
「で、二、三分で急にうずくまって、そのままいびきかき出したわけ。そしたら、すぐに従業員が来て俺等が注意される羽目になったわけ」
「とんだとばっちりだね」
「ホントだよ。奇跡的なタイミングで沈没しやがって」
「本人は覚えてるのかな」
「いや、次の日の朝訊いたら、従業員にフラれた時から記憶がなくなってた」
「あはっ、そこからなんだ。ちょっと腹立たしいね」
「で、上機嫌でラジオ体操始めるから、ホント腹立たしいよ」
「あはっ、ラジオ体操って。まだちょっと残ってたんじゃないの?」
「そうだろうな」
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